プレミア12。元中日の豪州監督に「完璧」と評された侍J源田の二死セーフティスクイズ奇襲はなぜ成功したのか?
中日時代に「ディンゴ」という登録名でキャッチャーもできるとのふれ込みでプレーしたニルソン監督はベンチで信じられないといった表情を浮かべクビを横に振っていた。 「スタートはいい形で入ることができたし、投手陣もいいピッチングをしたが、日本が足でプレッシャーをかけてきた。そこを抑えることができなかったのが敗因。周東のスピードはワールドクラス。この大会でも群を抜いている。私たちの守備に大きなプレッシャーを与えた」 ツーアウトからの、源田のまさかのセーフティスクイズの場面については、「リスクがあるところでパーフェクトにやった。敬意を表したい」と白旗を上げ、「一塁へ投げる選択肢はあったかもしれない。(ホームへ)トスをしてもよかったが、むずかしい判断だった」と、本塁を死守しようとした投手を責めなかった。 3万348人収容のZOZOマリンに、この日は、公式発表で1万7819人のファンしか集まらず、観客席には空席が目立ち寂しかったが、周東の二盗、三盗、そして、源田の驚愕のツーアウトセーフティスクイズにヒートアップ。 「あれでベンチが盛り上がって嬉しかったです」と、源田が感じた勢いが、豪州を一気に飲み込む。8回二死から豪州を自滅させ、オープニングラウンド初戦のベネズエラ戦同様、押し出しで決勝の勝ち越し点を奪ったのである。 二死から近藤(日ハム)が、レフト前へのテキサスヒットで二塁へ進出。鈴木が申告敬遠され、代打・山田(ヤクルト)が連続四球を選び満塁とすると、浅村は、最後、タイミングも取らず立ったままだったが、それでもストライクが入らず3連続四球で1点を押し出し。プレッシャーをかけて奪った、その1点が勝負を決めることになった。 この日、豪州の先発ルジッチが長身からインステップしてボールの出のタイミングをずらしてくる変則サイドだったため、「右打者はタイミングが難しいだろう」と判断して1番に丸(巨人)を入れてスタメンに左を4人並べた。それが巡り巡って逆転劇につながった。 お立ち台には“走のヒーロー”周東が立った。 「凄く気持ちいいですね」 その快足が世界で通じることを証明したソフトバンクの育成出身の侍戦士は涼しい顔をしていた。 稲葉監督は、「ひとつ勝つのは難しい。でも必ず終盤に何かが起きると信じていた」とミックスゾーンで声のトーンを上げた。 そして「中継ぎが、四球をひとつも出さず頑張ってくれた。それが逆転劇につながった」と、田口(巨人)、岸(楽天)、甲斐野(ソフトバンク)でつないだ4イニングの無失点リレーを絶賛した。 自慢の投手陣が持ち味を発揮し、豪州を驚愕させた「スモールベースボール」で同点となる1点をもぎとり、そして、頼れる4番打者、鈴木に大会3号が飛び出した。「ザ・ジャパニーズ」と呼んでいいような形で、スーパーラウンドの初戦を白星で飾ったのである。 明日は米国戦。この日、同刻に東京ドームで韓国に敗れたが、今大会の優勝候補の一角。ヒーローの周東が、「今日みたいに緊迫した場面でいくと思うんですが、いつも通りしっかり自分の仕事をしたい」と言えば、源田も「後半、すごい盛り上がっていた。いい流れで明日の試合に臨めるんじゃないですか」と意欲を口にした。 稲葉監督は、走塁ミスが目立ったが、「アウトになったらオレの責任。積極性を失わないで次の塁を狙ってもらいたいと、もう一度確認したい」と言い、「アメリカは、いい選手が多いが、日本もひとつになって、みんなで勝ちにいきたい」と勝利宣言した。 日本は、スーパーラウンド前半戦の山場にサブマリン、高橋礼(ソフトバンク)を先発に立てる。