「新三人娘」から『スタ誕』『ザ・ベストテン』…日本の「アイドル」の原点を築いた南沙織 原石の輝き
『スター誕生!』スタート
そのテレビが主役の時代ならでは、初々しさを視聴者も一緒に体感できるような番組、そしてアイドル史において大きな存在となる番組が、同じ’71年の秋にスタートしている。 『スター誕生!』(日本テレビ系)。 『スタ誕』の愛称でも親しまれた、一般参加型の歌手オーディション番組で、勝ち上がることで契約したいレコード会社やプロダクションから札が上がると合格というシステム。この番組から、タイトル通り男女問わず数多くのスターが誕生した。 番組初期の合格者のなかでも大きな存在となったのが、森昌子、桜田淳子、山口百恵の3人。同学年だったことで、のちに「花の中三トリオ」と呼ばれた3人である。 翌’72年には、『ひなげしの花』などで、香港人ゆえの日本語歌詞のたどたどしさと初々しさをさらに突き詰めたかのような歌唱で好感度を集めたアグネス・チャンが登場、’73年に『わたしの彼は左きき』を大ヒットさせた麻丘めぐみも同年がデビューだ。森昌子もこの年の7月に『せんせい』でデビューしている。 ここで男性アイドル界に目を向けてみると、野口五郎、郷ひろみ、西城秀樹の「新御三家」も、野口が’71年、郷と西城が’72年と同時期にデビューしトップアイドル歌手として席巻する。人気アイドルグラビア誌『明星』と『平凡』の表紙を飾る顔ぶれも、一気にこの世代、中三トリオと新御三家中心のものに変化した。 年は明けて’73年。『コーヒーショップで』のあべ静江、『赤い風船』の浅田美代子、『涙の太陽』の安西マリアらがデビュー、『スタ誕』組の桜田淳子、山口百恵もこの年にデビューしている。 ◆「普通の女の子に戻りたい」 そしてこの年、ひとつのグループが誕生する。 キャンディーズ。冒頭の通り、’23年の『NHK紅白歌合戦』に出場し、キャンディーズメドレーを披露し好評を得た伊藤蘭(ラン)、そして田中好子(スー)、藤村美樹(ミキ)の3人組。’73年に『あなたに夢中』でデビュー、『8時だョ!全員集合』(TBS)にレギュラー出演するなどしたが、デビュー当初はそれほどヒットには恵まれなかった。しかし、’75年にスーからランへとセンターをチェンジしてリリースされた5枚目のシングル『年下の男の子』が初のトップテン入りを記録、その後は『ハートのエースが出てこない』『春一番』などヒット曲を連発、’76年からは伊東四朗、小松政夫と共演し、デンセンマンやしらけ鳥などのキャラクターも人気となった『みごろ!たべごろ!笑いごろ!!』にもレギュラー出演、お茶の間アイドルとしての人気を拡大させていった。 人気をどんどん拡大させ絶頂期に向かうなか、「普通の女の子に戻りたい」という発言とともに語られる、’77年7月の日比谷野外音楽堂でのコンサートの場での解散宣言は大きな衝撃だった。 キャンディーズは、紙テープをステージに向かい投げ、メンバーの名前を呼ぶなど、紅白でもその片鱗が垣間見えたであろうファンの熱い応援も、応援の中で一緒に成長していく現在につながるアイドルの楽しみ方を大きく拡大させたグループだが、アイドルとはファンと一緒に作り上げていく虚構の存在であり、「普通の女の子」とは違う存在だということもあらためて実感できる発言だった。 この解散宣言を機に注目度はさらに加速、これまでのシングルの曲名を織り込むというエモさを盛り込んだ歌詞のラストシングル『微笑がえし』はキャンディーズ最初で最後のオリコン1位を獲得、後楽園球場に5万5千人を集めた解散コンサートの熱狂とともに、伝説は刻まれた。