「新三人娘」から『スタ誕』『ザ・ベストテン』…日本の「アイドル」の原点を築いた南沙織 原石の輝き
現代的アイドルの歴史は、「南沙織」のデビューから…
’23年の大みそかに放送された『NHK紅白歌合戦』で伊藤蘭が披露した「キャンディーズ50周年 紅白SPメドレー」。かつての親衛隊が当時そのままの熱い応援をする姿は大きな話題となった。さらに同じ紅白ではYOASOBIが歌う「アイドル」に、アイドルカテゴリーの紅白出場歌手たちが性別、国籍を超えて次々登場し、それぞれの個性をいかした華麗なダンスを次々に披露。この2つのパフォーマンスは、「アイドル」という存在そのものについて強く考えさせられるものとなった。 【画像・全7枚】「や、やめて!」…ファンの少女の胸を触りわいせつポーズ強要「メン地下アイドル社長」戦慄の素顔写真 アイドル評論家・中森明夫氏によると、キャンディーズがデビューする2年前、’71年にデビューした南沙織が現代につながる女性アイドルの第1号、現代的アイドルの歴史は、南沙織のデビューで幕を開けたとされる。 南沙織。デビュー曲『17才』は、のちに平成元年(’89年)に森高千里がカバーしヒットしたことでも知られるが、筒美京平の手による洋楽的エッセンスがちりばめられたメロディに、同世代感を歌う世界観。そしてそれを歌う南沙織の印象的なロングヘアにミニスカート衣装、特徴的な歌声、そして南国系の明るい雰囲気をあわせ持つ原石感。中森氏以外にも南沙織は「元祖アイドル」と位置付けられることは多い。 10代の女性がキュートな振り付けと衣装、笑顔でポップソングを歌い踊る。まだプロにはなりきれていない初々しさと、活動の中での成長、そんななかで時折見せる大人びた雰囲気。 中森氏にならい、ここから約50年のアイドルの歴史を追いかけてみたい。 同年に放送され高視聴率を獲得した連続ドラマ『時間ですよ』(TBS系)での“隣のまりちゃん”役が注目を集め、作中でも弾き語りを披露していた天地真理が、南沙織のデビューから4ヵ月後に『水色の恋』で歌手デビューを飾り、「白雪姫」のキャッチフレーズが示す清純なイメージ、『ひとりじゃないの』などヒット曲も連発、冠番組の放送やその名と写真を冠した女児向け自転車「ドレミまりちゃん」まで発売されヒットするなど、’72年から’73年にかけ、小さな子供たちまで夢中になる「真理ちゃんブーム」を巻き起こす。その歌唱スタイルや7枚目のシングル『恋する夏の日』(’73年)で披露したテニスルック衣装、さらに曲の展開に合わせファンが「真理ちゃーん!」と叫ぶ声援も定着、のちにつながる「アイドル感」のイメージの大きな柱のひとつを確立させたことは間違いない。 そして同年『わたしの城下町』でデビューし日本レコード大賞最優秀新人賞を獲得した小柳ルミ子。南沙織、天地真理、小柳ルミ子は「新三人娘」と称されお茶の間の人気者となった。 これまでのお茶の間の人気者だった10~20代の女性歌手は、洋楽の日本語カバーなども多く、どこか「プロ感」のようなものがあったが、’70年代以降に登場し人気者となるアイドルたちには初々しさが感じられ、それが大きな魅力だったと考えられる。そして、娯楽の主役が映画からテレビの時代になり、映画発のスターがテレビ出演するのではなく、テレビがスターを作り出す時代になったことも、南沙織、または「新三人娘」以前以後での大きな転換点であっただろう。