胸張って生きていける! 熱く尊い木村拓哉さんのワンマンライブ
木村拓哉さんが2年半ぶりのワンマンライブ『TAKUYA KIMURA Live Tour 2024 SEE YOU THERE』を開催。12月25日(水)のマリンメッセ福岡まで続く全国ツアーから10月13日(日)に行われた横浜アリーナでのステージの様子をレポートします。 【画像】木村拓哉さん全国ツアーがスタート! 横浜でのワンマンライブの模様はこちら!
胸を張って生きる自信を与えてくれる木村拓哉のワンマンライブ
8月14日発売の3枚目のアルバム『SEE YOU THERE』を引っ提げての木村拓哉さんの2年半ぶりのワンマンライブのタイトルは、アルバムのタイトルと同名の『SEE YOU THERE』。あの場所で会おうという言葉を掲げているのは、2022年にリリースされた『Next Destination(次の目的地)』からの流れを受けてのタイトルだ。 前作の発売時期は、コロナ禍真っただ中。「こんな困難な時だからこそ、みんなで次の目的地を探そう」といった意味をアルバムに込めたという。そんな苦難な時を経て、今作はファンファーストでつけたタイトルとなっている。“あの場所で会おう”には、ライブ会場には必ず自分がいて、ファンにできる限りのパフォーマンスを提供するという木村さんの熱いメッセージが込められている。 横浜アリーナでのライブは、グループで行った1995年のツアー以来、なんと19年ぶり。ソロになってからは、初めてのことだ。久々のアリーナのステージに立つ木村さんを出迎えたのは、会場を照らすブルー一色に輝くペンライトの光。客席がキラキラと輝くマリンブルーの海のような幻想的な光景を作り出すと、鮮やかなブルーの衣裳に身を包んだ木村さんが眩しい光をまといながら登場。生オーケストラバンドのギターの音色が響き渡り、『I’ ll be there』からスタートした。 「久しぶり! 踏み込んだね、みんな望んだ場所に。お互いにだけど(笑)。横浜アリーナは久々なんですけど、自分のライブをここでやらせてもらえると思ってなかったので、非常にテンション爆上がりです。さすが名だたるいろんなアーティストのかたがパフォーマンスをする会場とあって、素晴らしいですね。こんな空調設備の整った会場あるんだ(笑)」と笑わせつつ、最初の挨拶を。 冒頭からダンサーと切れ味たっぷりのダンスで歌い踊った後、「ヤバイ、飛ばし過ぎた!」と笑う木村さんに「頑張れー!」という力強い男性の声が会場に響く。アットホームな空気感に「一体感がすごいなぁ」と言いつつ、「レディース!」「メンズ!」とファンに呼びかけコール&レスポンス。その圧倒されるくらいの大きな声に「そのパワー、力になるんで。ありがたい。恵まれてるな。幸せだな」と、しみじみする木村さんに会場から「拓哉~!」コールがあちこちから起こった。 今の木村拓哉だからこそ歌える少年のような胸キュンラブソングでは会場をうっとりさせたり、色気たっぷりなナンバーではファンキーなダンスが光ったり。ギターを演奏し、スタンドマイクの前でカリスマ性たっぷりに歌い上げる姿はスーパースターそのもの。楽曲の世界観ごとに表情を変える姿に木村さんのエンターティナーぶりを実感させられる。 中盤にさしかかる頃、「やってみようと思うことがあります。誕生日の人!」と木村さんが会場に尋ねると「はーい!」と大勢の人が挙手。ここで『UNIQUE』を歌ってお祝い。自動制御のペンライトをキャンドルに見立て、まるでキャンドルに息を吹きかけた瞬間のように会場が真っ暗になる場面も。スクリーンに会場に訪れた誕生日の人の名前が映し出される中、「ハッピーバースデー!」と祝福した。 「どうやったら喜んでくれるかなと思って、ドキドキしながら色々試行錯誤して、ライブを作らせてもらったのですが、喜んでいただけましたでしょうか?」と始まったMC。『UNIQUE』の自動制御のペンライト演出に触れ、「バースデーソングの前のあれ、大成功でした。素晴らしい瞬間を見させていただきました。ありがとう」とお礼を言ってから、「皆さんずっとオープニングから立ちっぱなしで…。そろそろ座りたいでしょ? 知ってるよ(笑)。ぜひ座ってください」とフレンドリーに着席を呼びかけるジェントルマンぶり。 そして、「Ⅹとかチラホラ覗いていたら、来年もやるみたいですね。23年連続らしいです。そこでですね、ちょっと皆さんには協力していただけたら嬉しいなと思っていることがありまして。今日この場を借りて、番組の収録をしたいと思います」と『さんタク』(フジテレビ系)の公開収録をすることに。「この番組、僕ひとりだと成立しないんで、相方をみんなで呼んであげて。いい? せーの、さんまさん!」と明石家さんまさんを呼び込む会場。通常のセットリストにはない楽曲を生演奏にて披露する一幕もあり、こちらの模様は番組を要チェック。 大盛り上がりだった収録後は、「もう1回ライブのチャンネルに戻すよ」と、ライブモードに切り替え。4年前のライブでも行った主演ドラマの主題歌をカバーするコーナーへ。 「最初の(ソロ)ライブをやらせてもらった時、『ロングバケーション』の主題歌をやらしてもらう時間を作ったりしたんですけど。いろんな作品に、携わらせていただいて。今年の年末に(『グランメゾン東京』の)尾花夏樹ってやつが帰ってくるらしいです。『Believe-君にかける橋-』など主演させていただいた作品が増えておりますので、ステージ用のアレンジでみんなにも聴いてもらおうかなと思っています」と説明があった後にまずは、『Believe-君にかける橋-』の主題歌『I’ ll be there』をコーラス隊と一緒に歌い、ラストハイタッチ。 この日は、木村さんからこの曲を今、届けたい理由が熱く語られる場面もあった。「前のライブに来てくれたみんなに『どんなに辛いことあっても、悔しいことがあっても、絶対に腐んなよ』っていう約束させてもらったんですよ。それでホントにコロナっていう面倒くさい状況でもね、腐らずに皆乗り越えてくれたと思います。皆に『腐るなよ』って言わせてもらった僕も本当に凹んだり、心が折れそうになったりするような出来事もあったんです。でも、皆に腐るなよって言ったよなって思い出して、あっ、腐ってる場合じゃないなと思って。みんなのおかげで乗り越えられました。その約束をした時にこの曲をみんなと歌ったんです。僕らが腐らない約束をさせてもらった時に流れていたこれから歌う曲は、僕らの主題歌といっても、おかしくない。そんな曲をよかったら、皆と一緒に歌いたいなと思います」と語り、ある曲を紹介。 振り返らずにここまで来たけれど、少し立ち止まって視点を変えて、軌道修正をしていこうと歌う曲でコロナ禍を乗り越えた人たちすべてにとって共感できる歌詞が胸に響く。やりきれない想いを手放そうと思えるようなメッセージソングを、心を込めて歌う木村さん。最後には、「今まさにチャンス…ありがとう」と優しい声でささやいた。 ラスト曲では「今日は本当にありがとうございました。さっき、みんなにお話しましたけど、みんなに『腐るなよ』とは、もう言いません。その代わり、何かあっても辛いよ。大変だよ。悔しいよ(笑)。でも、胸を張っていて下さい。みんなが胸を張っていたら、俺もそれを叶えたい。胸張ってやっていける。お互いに胸の張り合いをしていこうじゃありませんか」と力強く呼びかけると、会場は同意の声と拍手喝采が巻き起こる。 そして、「こういう場に立たせていただくと、改めて『ああ、俺、やっていて、いいんだな』と、ちゃんと感じ取れることができます。本当に1人では何もできません。一緒に作ってくれているバンドメンバーとスタッフがいてくれて初めて自分がここに立てます。そして、このステージの前にみんながいてくれることで、このライブが成立しています。本当にクルーの皆がいてくれるからこそ、俺はここにいることができるんだなと思っています。本当にありがとうございました」と感謝の想いを伝えた木村さん。 ライブ本編の最後では、今の“木村拓哉”という人間の心のうちを歌ったかのような楽曲を披露。ラスト、I’m HEREの文字がスクリーンいっぱいに映し出され、拍手に包まれた。 もう一度、歌声を聴きたいとアンコールを求める拍手が鳴りやまない中、木村さんが再びステージに。バラード曲を披露してから、「せっかくアンコールをいただいて、こんなしんみりと終わったら怖いでしょう(笑)。ちょっとアゲアゲでいきますか? じゃあ、久々にこういう感じ…いける?」 会場に微笑むと流れたイントロに割れんばかりの歓声が…! 会場がこの日一番の盛り上がりを見せたところで、「胸張ろうぜ! サンキュー!」と叫んだ木村さん。Crew(ファン)のみんなは“腐らずに行こうぜ”という木村さんとの約束の言葉を胸に大変な日々だったコロナ禍を乗り越えてきたが、今度は、“胸を張ろうぜ”がおまじないのように人生の合言葉になることは、間違いないだろう。どんな時も胸を張って生きている木村さんだからこそ、説得力たっぷりに届けられる言葉だ。会場に訪れた誰もがここでパワーチャージをして、明日からの活力を得られたライブだった。
写真・今津聡子 取材、文・福田恵子