森永卓郎氏が「都会暮らし」を危険視するワケ グローバル資本主義の崩壊で起こる悲劇
これから幸せに生きるには創造性と教養が必要
オムロン創業者の立石一真氏は、1970年に発表した未来予測学の「サイニック理論」において、2025年以降は「自律社会」へ移行すると予測しました。これは「自立・連携・創造」を3本柱とする社会です。 自立とは他者に依存せず、必要なものは自分自身や自分たちの地域で作ることを意味します。加えて周りの人たちと連携し、互いに支え合うことが必要になる。私も昨年末にガンの治療を始めてから農作業ができなくなりましたが、近所の畑で野菜作りをしている人たちが収穫物を大量に差し入れてくれるおかげで、今も野菜は買わずに済んでいます。 そしてビジネスパーソンにとってますます重要となるのが、3つめの創造です。定型業務が人工知能に置き換われば、人間に残された道は一つしかない。それはAIにできないクリエイティブな仕事をすることです。 では創造性を養うには何が必要か。私は「教養」だと考えています。そもそも、なぜ世の中のビジネスパーソンがお金を稼ぐことにこだわるかといえば、幸福はお金でしか買えないと思っているからです。 確かに都会には三つ星レストランや最新のエンターテインメントを提供する劇場やテーマパークがたくさんあり、お金さえ払えば楽しい時間を過ごせる。誰でも楽しめるように作られた場所なのだから当たり前です。 一方、私が住む所沢は、おしゃれなレストランもないし、エンタメといえばたまにイオンに無名の演歌歌手が来るくらいです。しかし、ここでの暮らしがつまらないなんて思ったことはありません。畑へ行けば無数の鳥や虫たちに出会えるし、空を見上げれば様々な形の雲が流れていく。それを楽しめるのは、鳥や虫、雲の名前を知っているからです。 上から目線に聞こえるかもしれませんが、教養があれば、お金をかけなくても自分なりの幸せや生きがいを見つけられるというのが私の実感です。
「1億総アーティスト」で誰もが人間らしく生きる
今の私には楽しみがたくさんあります。世間の人たちは私の仕事を経済アナリストだと思っているでしょうが、実は歌手もやっているし、小説も書くし、博物館も運営しています。 最近力を入れているのが寓話の創作で、目標は「打倒イソップ」(笑)。イソップが生涯で700ほどの寓話を書いたそうなので、それを超えるつもりです。寓話なんて頭の中で考えるだけだから1円もかからない。でもクリエイティブな仕事だから楽しくて仕方ありません。 私が思い描く未来像は「1億総農民」であり「1億総アーティスト」です。これは妄想ではなく、私が社会実験の末に実現可能だと実証しました。 だから、私から読者へのメッセージは「皆もやろうぜ!」。 お金を稼ぐためにくだらない仕事に人生を費やすのではなく、一人ひとりが教養を身につけ、創造的なアーティストとして人間らしい仕事に取り組み、自由に楽しく自己表現する。ぜひそんな人生を築いてほしいと思います。
森永卓郎(経済アナリスト)