フジロック×サマソニ社長対談 運営トップが赤裸々に語る2大フェスの「今」
アジア圏との連携、スマホ撮影への持論
―先ほどの話もありましたが、アジア圏との連携は音楽業界の今後を考えるうえでも重要なトピックですよね。 清水:去年までもアジア圏からいろんなアーティストを呼んできましたし、今年はバンコクでサマソニを開催するので、現地のプロモーターと連携しながらタイのアーティストを中心に日本にも呼んで、逆にバンコクにも日本のアーティストをブッキングしようと話し合っています。3~4年の継続を前提に、うまくいけば何年も続けようと。そうやって挑戦しながら3~4カ国くらい開催地域を増やしていくプランを構想中です。バンコクの件をアナウンスしてから、色んな国から「やってくれ」って声が届いてる状況ですね。最初の年なので、まずは成功事例をしっかりと作っていくのが課題かなと。 佐潟:フジロックもアジア圏のアーティストは元々呼んでいて、例えばインドのBloodywoodは、(2022年の)フジ出演が話題となって単独公演も東京は売り切れましたし、お客さんも興味があるんだと思います。また今年は、台湾で10月に開催されるフェス「ROCK IN TAICHUNG」にROOKIE A GO-GOステージが登場するなど、アジアのフェスと相互に交流するような新たな試みも計画しています。 ―フジとサマソニは海外シーンの状況を伝える機能を果たしてきた一方、近年は日本の音楽文化を海外に届ける役割も担っているように思います。 清水:本当にサマソニとフジはアジアの人たちにとって憧れなんだと感じるね。この前バンコクで記者会見をやったときは、サマソニに遊びに来ているアーティストも多くいて、「私の夫も行ったことがありますよ」と言ってくれた政党の党首もいたし、会見に首相まで来てくれた。これだけ洋楽アーティストが出て、何万人という規模で続いているフェスはアジアでもなかなかないし、海外の音楽関係者も来てくれて、彼らがそのときに観た日本のアーティストのファンになることもあった。今それが花開いてるのを実感するね。 ―そういう意味で、特に注目してほしい国内の出演アーティストは? 清水:Spotifyとのコラボステージ(Spotify RADAR: Early Noise Stage)ですね。去年は新しい学校のリーダーズ、imaseという、今や世界で引く手数多のアーティストも出演していました(両組とも今年のサマソニにも出演)。つまり次に世界へ行くアーティストを観ることができる。我々はそこまでブッキングに関わっていないので、個人的にも楽しみにしています。 佐潟:betcover!!ですね。フジロックのキックオフイベント(4月開催)で初めて観たんですけど、この人は相当面白いなと。あと、Suchmosの頃から付き合いもあったHedigan’s(YONCEの新バンド)。再出発についても相談されていて、それはぜひフジロックでお手伝いできればっていうところで。 ―日本と海外の現場でギャップがあるとすれば、ライブ中のスマホ撮影かなと。来日公演では撮るのが日常的な光景になりつつありますが、フジもサマソニも「出演アーティストの撮影及び録音は禁止」とルール上では明文化されている。でも、それを知らずに撮っている方もいれば、アーティスト側もその映像をSNSで共有していたりして、ここ数年はなんとも言えない状況が続いているように思います。 清水:海外から来る人は撮るのを当たり前だと思ってるけど、日本だと禁止されている。そのギャップは見てて心地よくない。僕らが言えることは、アーティストがOKな場合はOKなんですよ。ある意味そこに委ねるしかない。海外のアーティストがこれだけ参加しているフェスなので、ある程度はモラルに任せるしかなくて。日本のロックフェスは「撮るな」の一点張りだし、ガチガチにそのルールを運用するしかないけど、果たしてそれが自由なフェスと言えるのか。疑問をずっと持っているのが正直なところです。 佐潟:海外の公演だとスマホ撮影は当たり前なので、規制すらしないんです。例えばビョークみたいに「絶対ダメ」っていう人もいるけど、基本は撮っていいのが普通。日本は厳しいけど、最近はスマホに関してそこまで言わなくなってきたかなと思います。 清水:でも、ルールは出さなきゃいけないんだよね。 佐潟:個人的にはいいんじゃない?と思います。 清水:だそうです(笑)。要は「わかってほしい」ってところだよね。 佐潟:単独公演ならともかく、規制しようがないですからね。フェスで急に捕まえても楽しくないですよ。 清水:上海でフェスをやったとき、みんな撮影し始めたら日本のスタッフだけがバーって注意しに行ったんだよね。お客さんからすると「え、なんで?」みたいな感じで。それがすごく滑稽に思えてしまって。何でも規制する日本の方針はどんどん世界とズレてきている。僕らサマソニやフジは、世界と日本の中間なんだよね。どっちが正しいとかではなく、世界がどうなっているのか見せていくべきだと思っているので、そこは理解してもらいたいです。 ―では最後に、お互いのフェスへのエール交換をお願いします。 佐潟:今年は会場が変わる大阪に初めて行ってみようかなと。マネスキンとか、もうフジロックには出せないアーティストを観てみたいと思ってます。 清水:フジロックのブッキングは大変だと思うんだよね。今までやってきたものを活かしながら、新しく変わっていかなきゃいけない。佐潟社長になってどう変わっていくのか。本当に期待しています。 --- FUJI ROCK FESTIVAL’24 2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場 SUMMER SONIC 2024 2024年8⽉17⽇(⼟)18⽇(⽇) 東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ ⼤阪会場:万博記念公園 ※東京会場は全券種ソールドアウト SONICMANIA 8月16日(金)幕張メッセ 開場:19:00/開演:20:30
Toshiya Oguma