フジロック×サマソニ社長対談 運営トップが赤裸々に語る2大フェスの「今」
大円安時代におけるライブ招聘の現実
―コロナ期間中は大変だったと思いますが、現在の来日公演の状況はどう見ていますか? 佐潟:今はいいですよね。去年は結構ピークで、特に年齢層が高めのアーティストは動員もすごくて。コロナ禍で来日公演がしばらく途絶えていたのもあってか、「こんなに入るの⁉️」っていうコンサートもありました。 清水:自分たちが想定していたよりも1.2倍くらい入ってる感覚だよね。50~60代くらいに人気のあるアーティストの動員が意外とあったり。色々リサーチしたところ、その世代で音楽が好きな人たちって、仕事が忙しかったからずっと時間がなかったんだよね。それで当時は行けなかったけど、今は余裕も生まれて戻ってきてる現象がある。洋楽はシュリンクしたと言われるけど、動員的にはそこまで落ちていないことがここ数年で証明されてるかな。 ―その一方で、若いアーティストの来日公演では若いお客さんがしっかり増えている印象もありますし、インバウンドの影響も大きそうな気がします。 清水:そうだね。「こんなにみんな歌うの?」とびっくりするし、英語が喋れるアジアの人たちが多く来ているのは現場で強く感じる。特に円安の今は、日本にわざわざ洋楽アーティストを観に来る現象もかなりあるんじゃないかな。日本行きのチケットを安く入手して、観光しながらライブを楽しむみたいな。 ―そういった形で興行面での恩恵もありつつ、招聘にあたって円安は本当に厳しい状況だと思います。 佐潟:ヤバイっすよ。昔は1ドル=80円とかありましたもんね。ウチがレディオヘッドとか呼んだ頃だったと思うんですけど(2012年)。10年前の出演料の最高値って、もう今は支払えないですもんね。 清水:結局払える限界は決まってるので、そこから逆算してオファーすると必然的に海外のアーティスト数を減らさざるを得ない。MARINE、MOUNTAIN 、SONICという3つのメインステージは、洋楽比率が50%以下にならないようにしています。そこが今はギリギリのラインかなと。お客さんは昔のラインナップを見て「あの頃はよかった」とか言うじゃない。俺だってよかったよ!(苦笑)。でも、色んな理由からそこにはもう戻れない。それでも割合とかはお互いこだわってるポイントじゃないかな。 佐潟:フジも特に、コロナ禍以降は国内勢の比率が大きくなってきて、今はメインステージで大体半々ぐらい。これ以上円安になるとさらに削る判断も必要になるかもしれないけど、現状50%は最低限確保するように心がけています。 ―ビジネスとしては邦楽勢や、もしくはサマソニのようにK-POPなどの割合を増やした方がいいのかもしれないけど、洋楽フェスの伝統を守るためにも50%は死守しようと。 清水:そうだね。ただ、K-POPは必然的に増えてる。一番最初にBIGBANGとか少女時代が出たのはもう10年以上前だから。アジアのアーティストのステージを作ったり、いろんなことにチャレンジしてきたんですよ。例えばその頃、ビヨンセやリアーナをヘッドライナーにしたのもそうだけど、先の時代を見据えながら(ラインナップを)組んで、その動きが大きくなってきたらブッキングも含めて広げていく。それをサマソニは自然にやってきたし、できるようにしてきた。そこがフジロックは難しいから大変だと思う。 佐潟:そうですね。サマソニは昔からK-POPを地道に積み上げているけど、ウチがいきなりK-POPの大物をブッキングするのはフジロックのお客さんの求めているものを裏切ることになりかねない。それこそ「日和ったな」ってすぐ言われそう。