向井理 デビュー当時に天国と地獄「負けてられない」
映画『小野寺の弟・小野寺の姉』に主演する、俳優の向井理。本作でメガフォンを取る西田征史監督とは、向井が映画初出演を飾った2007年の映画『ガチ☆ボーイ』で、“俳優同士”として出会い、7年振りの“共演”となる。デビュー当時を振り返り向井は「周囲からは『23歳のデビューでは遅すぎる』と散々言われてきた」と苦笑するが、メキメキと頭角を現し、今ではすっかり人気俳優としての地位を確立している。それでも「未だにこの業界に対する“不思議な感覚”は抱いていて、どこか冷めている部分もある」、「俳優は派遣社員のようなもの」と、客観的に自分の立場を見つめている。 ■現場ごとに異なるニーズ 「俳優は派遣社員」 2006年に放映されたテレビCMからキャリアをスタートさせた向井は「10年一区切りなんて言葉があるけれど、あと少しでそうなると思うと『結構やって来たなぁ』と。飽きっぽい性格なので最初の頃はすぐに辞めるだろうと思っていたので、一つの事に集中してきたのは自分でも驚き」と、感慨深げな表情を浮かべる。しかし「未だにこの業界に対する“不思議な感覚”は抱いていて、それは今でも変わらない。どこか冷めている部分があるのかもしれませんね」と、現在の安定した人気を得ても浮き足立つ様子はない。華々しい仕事と思われる俳優についても、現場ごとに求められるニーズは違う。だからこそ向井は俳優業を、成長し続けないと仕事を得られない「派遣社員のようなもの」と例える。その理由は、若かりし頃のとある経験にあった。 ■デビュー当時に天国と地獄を経験「負けてられない」 スカウトを経てこの世界に飛び込んだ当時は「そもそも俳優として主役をやるなんてことは、半分は考えていませんでしたから。『ただ入っただけ』という風だったので、もちろん仕事なんか来なくて、(俳優業以外の)アルバイトをする日々でした」と打ち明ける。そんな中、オーディションに受かり初めて出演したCMの撮影で、知られざる世界を垣間見る。「当時の僕は無名でしたが、主役ということもあって、椅子に座っていればメイクをしてくれるし、衣裳も用意してくれる。それまで歩こうが転ぼうが誰も気にしない生活を送っていた中で、自分が失敗すると数十人のスタッフが一斉に動くという世界は本当に不思議。カルチャーショックを受けましたね」と、日常とかけ離れた独特な業界に戸惑いを覚える。 ところがその次に決まった仕事では、あまりに対照的な待遇に驚かされる。「エキストラとして使ってもらえることになった現場では、日なたで長時間待った挙句に出番がなくなるとか、前回のCM撮影とは一転、ボロ雑巾のような扱いでしたね。無名俳優にとっては普通の扱いなのですが、最初の待遇がよかっただけに驚きでした。でもそれがあったからこそ『負けてはいられない』というハングリー精神と向上心を抱くようになった」と、短期間で味わった“天国と地獄”が向井の俳優魂に火をつけた。