向井理 デビュー当時に天国と地獄「負けてられない」
■「必要とされてない」と悩んだ時期も オーディションでの度重なる落選も経験。「面白いくらいに落ちるので、24歳の頃には、『この業界に必要とされていないなら、飲食店の仕事に戻ろうかな』と思うくらい悩みました。『これで最後だ』と覚悟を決めて挑んだオーディションでたまたま受かって、その考えは消えましたけど、今振り返るとオーディションに落ちるなんてことは当たり前のこと。自分の経験値のなさの問題だったんですけどね」と、真っ直ぐ過ぎた当時の苦悩を笑い飛ばす。 ■盟友との再会にも緊張感を漂わせる 駆け出し時代に酸いも甘いも経験した向井は、『小野寺の弟・小野寺の姉』での盟友らとの再会にも、必要以上の感慨にふけることはない。「もちろん懐かしさや再会の嬉しさはありますが、西田監督と僕にとってこの映画はゴールではなく、次へ進むための通過点でもある。まだまだ僕らはこれからだと思わなければいけないから」と、お互いに成長した姿を作品で表現しつつも、あくまで次へのステップと捉える。「一つの作品を成立させて、それが終われば別の現場に行って成果を出す。特に今回の場合は西田監督をはじめ、プロデューサーやカメラマンも昔の僕を知っている。そこで成長していないと思われたら、俳優として2度と声をかけてもらえなくなる。2度、3度の再会は気が抜けないんですよ」と、柔らかい表情で話しながらも、ストイックな言葉に緊張感を漂わせる。 特殊な業界に飲み込まれ染まるのではなく、一歩引いたような姿勢で挑む。「ただ入っただけ」だった新人は、今では俳優の肩書を自覚と責任を持ち、“派遣”されるすべての現場でどん欲に成長を求めている。 (取材・文/石井隼人) 向井理(むかい・おさむ) 1982年2月7日、神奈川県出身。主演映画『小野寺の弟・小野寺の姉』が10月25日より全国公開。早くに両親を亡くしてから一軒家に暮らす、小野寺進(向井)と小野寺より子(片桐はいり)は、一見似ていなさそうだが、どこか似ている不思議な姉弟。そんな小野寺家に1通の手紙が誤配されたことから、それぞれの人生が動き出す。向井は「脚本が面白かったので、そこに書かれていることを力を入れずにペラペラと喋れば面白くなると思いました。片桐はいりさんと一緒に喋っている風情がナチュラルになればなるほど、撮影中は成功に近づいているとの実感を持ちました」と完成に自信を覗かせている。公式サイト