GPIFが主導する運用機関のエンゲージメント活動は、証券市場の質的向上に貢献しているか?
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は3月26日に「2023年 スチュワードシップ(受託者責任)活動報告」を公表した。この報告においては、世界最大の機関投資家として約200兆円の運用資産を管理運用するGPIFは、その資産の9割をインデックス(指数)に連動するパッシブ運用に委ねていることから、投資先との建設的な対話を進めるエンゲージメントも、パッシブ運用を行う運用会社による活動を重視していることを強調している。このため、「エンゲージメント強化型パッシブ」の運用会社を選定し、現在はパッシブ運用については選定した4社によってエンゲージメント活動を特に強化している。GPIFが推進する運用機関のエンゲージメント活動強化に注目したい。
GPIFは、「ユニバーサル・オーナー」(広範な資産を持つ資金規模の大きい投資家)、かつ、「超長期投資家」(100年後を視野に入れた年金財政の一翼を担う)として、スチュワードシップ活動を重視している。その活動の主眼は、企業の長期的な成長を阻害する活動を防ぎ、市場全体が持続的に成長することが不可欠という考え方の下、、運用受託機関と投資先との間で、持続的な成長に資するESGも考慮に入れた「建設的な対話」(エンゲージメント)を促進することで、「長期的な企業価値向上」が「経済全体の成長」に繋がり、最終的に「長期的なリターン向上」というインベストメントチェーンにおけるWin-Win環境の構築を目指すとしている。
たとえば、国内株式運用受託機関による日本株のエンゲージメント状況は、2023年1月~12月の期間において、上場企業2312社のうち40%にあたる924社と実施。対話を行った企業の時価総額は、東証全体の94%を占める。対話を行った運用機関のパッシブ・アクティブ比率はパッシブが84%を占めている(パッシブとアクティブを両方委託している機関については委託資金が大きい方をカウント対象とする)。