学校で「お前、臭いよと言われ… 両親は働けず風呂は週1回 「生活保護JK」だった女性が18歳で自立するまで
父の病気などを機に貧困に陥り、子どものころにお風呂は週1回しか入れなかった。JK(女子高生)時代に流行したルーズソックスは、安い「スティックのり」でとめていた……。 そんな「生活保護のリアル」をコミックエッセイとして発表した漫画家の五十嵐タネコさん(40)。「実際に生活保護を受けた著者だからこそ、語れることがある」という。 【漫画を読む】生活保護があったから救われた 「東京のど真ん中で、生活保護JKだった話」 * * * ■学校で「お前、臭いよ」と言われて ――五十嵐タネコさん(40)はコミックエッセイ『東京のど真ん中で、生活保護JKだった話』を昨年、書籍化した。印象的なのは、生まれたときから18歳で家を出るまで「風呂なし」の家で暮らし続けたというエピソードだ。 五十嵐 父と母と兄と私と4人暮らしで、めちゃめちゃ狭い家に住んでいました。極めつきが、風呂がない家というところ。私が学校に上がって友達の家に遊びにいくようになると、どこの家も豪華に見えた。「普通の家って、お風呂が家にあるんだ」って、それだけで驚きで。わが家は週に1回だけ近所の銭湯に出かけていくのが恒例で、残りの6日は風呂なし生活。物心ついて、一番つらかったのはそこですね。学校でクラスメイトに「お前、臭いよ」と言われて恥ずかしくて仕方がなかった。 そこで中学生になってからは、銭湯以外の日は、キッチンで髪を洗うという生活を続けました。朝シャンの洗面所なんてないですよ。壁に付いた瞬間湯沸かし器からジャーとお湯を出し、キッチンのシンクに洗面器を置いて、そこに頭を突っ込む。腰をかがめて髪を洗うと、たちまち腰痛になる。体はタオルで水拭き。冬は寒くて、寒くて……。 ■「生活保護」で立ち上がれる若者もいる ――なぜ、生活保護を受けていた家庭で育った経験を漫画に綴ろうと思ったのか。 五十嵐 2021年に、あるインフルエンサーがYouTube上でホームレスや生活保護受給者に対して差別的な発言をして話題になりました。「生活保護の人たちに食べさせるお金があるんだったら、猫を救ってほしい」などと語っていて、「あぁ、世間には不正受給のような悪いイメージがついてしまって、生活保護の人の福祉っていうことまで疎まれてしまうんだな」と残念に思ったんです。 漫画という媒体を選んだのは、貧困世帯の子どもたちに届きやすいと考えたから。生活保護を受けながらも、「実際、生活保護のおかげで立ち上がれた人間もいるんだよ」って、私の経験を伝えたかったんです。 ――貧困状態である事情や貧困から抜け出すことが難しい事情は人それぞれだ。五十嵐さんの父親は五十嵐さんが母親のおなかの中にいたときに脳腫瘍を患う。当時37歳、働き盛りだったが、「手術で死ぬかもしれない」と言われるほど難しい開頭手術を受けた。手術は成功したものの、後遺症として言語障害が残った。 五十嵐 父が37歳のときに、頭にできるがんである悪性の「脳腫瘍」が見つかりました。もともとは社交的だった父が、術後は口が回らなくなり、口数がかなり減ったそうです。