学生デモがきっかけでバングラデシュが“ヤバい”状態に 爆破予告や寺院に火炎瓶、首相は国外脱出…
8月5日、デモ隊は首相公邸を占拠。この後、空気は一気に変わった(現地SNSより) 反政府デモで政権が崩壊し、首相が国外脱出したバングラデシュの治安悪化が深刻だ。10月12日、首都ダッカのタンティ・バザール地区にあるヒンドゥー寺院に火炎瓶が投げ込まれた。11日には、やはり寺院でヒンドゥー教徒が襲われ、金品を奪われそうになった。阻止しようとした周囲にいた教徒を容疑者はナイフで刺し、5人が病院に運ばれている。この国で何が起きているのか。 【写真】現地の死者の数は千人を超えたという情報も 10月10日から13日にかけ、ヒンドゥー教徒の大祭「ドゥルガ・プジャ」が行われていた。インド神話をもとにした祭りで、顔や体を赤く染めて踊る光景は世界的に知られている。 この祭りを前に、SNS上では、イスラム系原理主義者のなかの急進派が公然と爆破予告や襲撃宣言といった投稿を繰り返した。 「ここはイスラム教のバングラデシュで、ヒンドゥー教の祖国ではない」 ■はじまりは公務員採用枠での差別撤廃を訴える抗議活動 日本大使館も在留邦人に対し、期間中は、ヒンドゥー寺院や祭りの会場などに近づかないように呼びかけていた。 2ヵ月前、シェイク・ハシナ首相がインドに脱出して以来、バングラデシュ全土でヒンドゥー教徒や仏教徒の村が襲われる事件が頻発している。治安は急速に悪化し、不穏な空気が流れている。ハシナ首相の辞任を受け、ノーベル平和賞を受けたムハマド・ハマス氏を最高顧問に据える暫定政権が成立したが、いまの混乱を沈静化させることは難しいともいわれている。 発端は6月に学生たちを中心にはじまった公務員採用枠での差別撤廃を訴える抗議行動だった。バングラデシュには、1971年の独立戦争の退役軍人の子どもや孫への公務員採用の優先枠があった。その割合は30%。2018年にいったん撤廃されたが、今年6月に最高裁判所が撤廃は違憲という判断を示し、学生たちの抗議活動がエスカレートしていく。当初からデモに参加していたダッカ大学の学生Mさんがこう話す。 「学生を中心として全国から若者が集まってきた。昔からうちの大学は抗議行動を繰り返してきたけど、これほど全国規模の行動になるとは思ってもいなかった」