【高校サッカー選手権】伝統をバージョンアップさせた新しい東福岡、東海大福岡を下し3年ぶりの頂点
第103回全国高校サッカー選手権福岡予選2次予選は11月10日、博多の森陸上競技場で決勝戦が行われ、3年ぶり23回目の出場を目指す東福岡と、12年ぶり15回目の出場を狙う東海大福岡が相まみえた。互いの特徴がぶつかり合う白熱した試合は55分に東福岡が先制。その後も激しい戦いは続いたがアディショナルタイムに東福岡が2点目を奪って粘る東海大福岡を突き放し、全国大会への切符を手にした。 【フォトギャラリー】東福岡vs東海大福岡 12年ぶりに実現した伝統校同士の対戦は、お互いの特徴が正面からぶつかり合う白熱した展開。どちらも一歩も引かない、決勝戦にふさわしい試合になった。 東海大福岡の最大の特徴は組織としての力強さ。前線の3人によるハイプレスを合図に、フィールドプレーヤー全員が連動して相手に襲い掛かる。特筆すべきは攻守の切り替えの鋭さと集散の早さ。ボールホルダーをあっという間に2人、3人で囲い込んで時間とスペースを与えない。そして球際の強度の高さを発揮してボールを奪うとシンプルに前線へ。前の3人を走らせて後方から全員で押し上げる。それを1試合を通して衰えることなくやり続けられるのは鍛え上げられたフィジカルの強さがあるからだ。 対する東福岡は高い技術を駆使してボールを繋ぎ、ピッチの幅を広く使ったサイド攻撃が武器。プレミアリーグWESTに参戦する実力は福岡県のトップであることは誰もが認めるところで、その華麗とも呼べる攻撃的なサッカーは「赤い彗星」の名とともに全国に知られている。サッカーそのものが強度の高さを求められるように変わっていく中で、それを前面に出して戦う相手に対して不覚を取ることもあったが、今年はいい意味での「泥臭さ」を身に付け、ここまで圧倒的な強さを見せつけてきた。 この両チームが真正面からぶつかり合うのだから、どちらも一歩も引かない戦いになることは当然のことだった。東海大福岡のハイプレスと球際の強度の高さは、東福岡に時間とスペースを与えずに自由を奪った。そしてキャプテン永田覚都(3年)を中心にゲームを組み立て、倉田連(3年)、池田蒼音(3年)のスビートを活かして東福岡ゴールに迫る。 東福岡も負けてはいない。東海大福岡のハイプレスに苦しみながらも、アンカーの位置でプレーする大谷圭史(3年)が両サイドにボールを配り、右からは児玉愁都(3年)が、左からは神渡寿一(3年)が縦へ駆け上がる。特に神渡の前への推進力は威力抜群。力強い突破から何度もチャンスを作り出す。 そして守備の強さは両チームに共通するもの。東福岡は大坪聖央(3年)と山禄涼平(3年)の、東海大福岡は長谷川陸(3年)と鈴木陽太(3年)の両センターバックがゴール前に立ちはだかる。ともにチャンスを作り、ともに跳ね返し、いつ決着がつくとも知れない試合が続く。55分の東福岡の先制点は、伊波樹生(3年)が左サイドからドリブルで中央へ切り込み、ペナルティアーク付近から豪快に右足を振り抜いて奪った素晴らしいゴールだったが、その後の試合の流れは変わらず。どちらに勝利の女神が微笑んでもおかしくない紙一重の戦いが続いていた。 そんな試合の決着をつけたのは途中出場の山口倫生(2年)。大谷からの前線へのロングフィードを追って相手ディフェンダーとの競り合いを制してスルスルと裏へ抜けて右足を振り抜く。これがゴールネットを揺らして2-0。激しい戦いに終止符を打った。 そしてここから3年ぶりの舞台に向けての準備が始まる。「あと5回、しっかり戦って結果を出したい」と平岡道浩監督(東福岡)は目標を口にする。 「やることは変わらない。25年間コーチをしてきたので良いも悪いもたくさん知っている。今まで成し遂げられなかった部分を成し遂げたいと思う。志波先生、森重さんが全国優勝したところを視野にしっかり入れながら、新しい東福岡を作っていきたい」 これまで作り上げてきた伝統をバージョンアップさせた新しい東福岡が、3年ぶりの全国の舞台で何を見せてくれるのか、いまから楽しみだ。 (文・写真=中倉一志)