雨穴、『クレヨンしんちゃん』のホラー回は「今観ても怖い」 台本で狙った“怖さ”を語る
『クレヨンしんちゃん』は平成のギャグマンガ/アニメで、しんちゃんの日常に笑い、家族愛にほっこりできるのが魅力の作品だ。しかし、あなたは知っているだろうか、『クレヨンしんちゃん』には肝が冷えるホラー回が、夏に放送されていることを……。 【写真】雨穴のホラー回場面カット 今年の『クレヨンしんちゃん』のホラー回は8月31日に放送される。ゲストとして登場するのは、ホラー作家でありYouTuberの雨穴。 雨穴はもともと作品のファンだったと明かす。今年のホラー回の台本制作にも関わったという雨穴は、『クレヨンしんちゃん』の平和な世界にいったい何を持ち込んだのか。 ■『クレヨンしんちゃん』は「本格ホラーを作っている」 ーー『クレヨンしんちゃん』の世界に自分が入ることについてどう思いましたか? 雨穴:『クレヨンしんちゃん』は、子供の頃からずっと観ていました。なので自分があの野原家の家に住んでいる、もしくは育ったような錯覚があって、実際自分がその中に入るということに不思議な感じを覚えました。でも、ある意味で懐かしいような気もして。子供の頃にアニメを観ている時に、しんちゃんとあの家に暮らしていた感じ、その感覚をちょっと思い出しました。 ーー『クレヨンしんちゃん』での好きなエピソードは? 雨穴:映画では『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』がすごく好きです。 ーーそんな『クレヨンしんちゃん』のホラー回は夏の風物詩となっています。ホラー回で印象に残っているものはありますか? 雨穴:ホラーだと、しんちゃんたちが通うふたば幼稚園が怖くなる展開がすごく好きです。呪いの人形を誰かが拾ってきて、最終的にその人形にしんちゃんがものすごい落書きをして、髭とか描いてしまって……というエピソード。最後はギャグで終わる回だったのですが、子供の頃はそのギャグパートに至るまでの前半部分がすごく怖かった記憶があります。 ーー子供の頃からそういったホラーが好きだったんですか? 雨穴:小学校の頃は『学校の怪談』シリーズがすごく好きで読んでいました。そう思うと、『クレヨンしんちゃん』のホラー回は、いわゆる本格的なホラーを目指して作られた作品を観るようになった後で観直しても、すごく怖いです。本当に本格ホラーを作っていると感じています。 ーーホラー作品で好きな系統はありますか? 雨穴:好きなのは幽霊が出てくるものですね。怪異が出る作品は日常のシーンを徹底的にリアルに描くので、その“リアル”の中に1つの大きな嘘としての怪異が乗っかるという作り方が好きです。 ーー確かに、『クレヨンしんちゃん』もそういう作りですね。 雨穴:怪異が襲ってくる以外にも、例えばいつものリビングでの影の当たり方や、昼間なのにちょっと日陰で暗い雰囲気にしていたり、日常に何かが入ってくる感じを演出する、プロの舞台設計ですよね。これは大人になってから分かったことですが。 ■初めてのアフレコは「難しかった」 ーーアニメの声優として、初めてのアフレコはどうでしたか? 雨穴:今回のアフレコは1人でやりました。そして演じるのが自分役だったこともあり、いつも自分がYouTubeを撮影している感覚で自然にできたので、やりやすかったです。あと、すでに声も入っていたので、自分の書いたセリフを『クレヨンしんちゃん』の声優さんたちが読まれていることのすごさを実感させられました。 ーー絵に合わせて演じることは難しかったですか? 雨穴:撮り方で言うと、普段はまず声を取ってから映像をそこにつけるやり方をしています。なので、方法としてアフレコと真逆(=プレスコ)なので、既にある映像に声をつけるのはやはりタイミングがすごく難しいと思いました。声に関しては、実は最初、抑揚をつけてかわいらしく読む方法と、普段のYouTubeのように、ナチュラルに無表情気味に読む方法、どちらが合っているのかを考えて両方で練習していました。監督さんに現場で相談したら「ナチュラルな方で、 声はかわいらしくない方でお願いします」と言っていただいたので、普段通りでいいと言っていただけたことでやりやすくなりました。 ■『クレヨンしんちゃん』ホラー回で家族をテーマにした理由 ーー今回、台本も雨穴さんが書かれたと。 雨穴:最初はこちらが2パターン提案したんです。1つはしんちゃんが犯罪者のアパートに行って、その人に囚われている子供を救い出すという雨穴の登場する余地がない謎解き形式のもの。もう1つは、雨穴がしんちゃんの家になぜかいきなり侵入してくるというお話。それで、後者の方がいいとなりました。 ーー大きなテーマとして“家族”を掲げたのはなぜですか? 雨穴:自分の子供の頃を思い出しても、『クレヨンしんちゃん』をずっと観ていた人やいま観ている人は、少なからず、しんちゃんと友達や家族になった気持ちで観ている人が多いと思うんです。でもその一方で、実際にしんちゃんの世界で、 自分たち視聴者が家族として受け入れられるのかと言ったら、それはたぶん違う。そこに矛盾があるなと考えて、そこを深掘りしてみようかなと思って、今回作りました。 ーー確かに、そういう“居心地の悪さ”もホラーの一要素なのかもしれませんね。 雨穴:そもそも『クレヨンしんちゃん』は、ギャグ以外にも普段から日常的なシーンをしっかりと描いている作品だと思います。そこになにか1つ、外からものが入ってくることがホラー表現と相性がいいんだろうなと思っていました。 ーー『クレヨンしんちゃん』ファンの方へはどんな思いですか? 雨穴:『クレヨンしんちゃん』のファンは、自分もファンなので、一種の同志です。 ーー今回、アニメの声優は挑戦だったと思うのですが、今後やってみたいことはありますか? 雨穴:お化け屋敷をやってみたいと思っています。映像も楽しいですが、次は手触り感があるものをやってみたいなと考えています。 ーーちなみに、もしお化け屋敷をするとしたらどういう仕掛けにしますか? 雨穴:多分、1番怖いのって、“何かが出そうで出ない”という、不安をかき立ててくることだと思うんです。なので前代未聞だと思うんですけど、「お化けが出そうな雰囲気はすっごいあるんだけど、最後まで結局なにも出ない」みたいな。金返せって怒られるかもしれないんですけど(笑)。
間瀬佑一