全英女子をパスして戦い切った2勝目、国内メジャー初制覇の3勝目。そして25年は「トップ選手として迎えるシーズンです」【中村修が振り返る「桑木志帆の躍進」・後編】
急遽何人かの札幌の知り合いに連絡すると、プロも出場する「札幌オープン」で優勝し、日本オープンに出場したこともあるトップアマの工藤大之進さんを紹介してもらえました。 開催コースの桂GCは週に3回はプレーしていて風向きもグリーンも熟知しているという強力な助っ人でしたが、練習日は仕事があってバッグを担げるのは初日からだとのこと。それでも構わないとお願いし、初日の前日に夕飯を共にすると「桑木さんが優勝する夢を見たので今週勝ちますよ!」と力強く“宣言”してくれました。 ギアも工夫しました。スピードの遅いグリーンが続いたことで、ヘッドが少し上から入るようになっていたこともあり、ピン社にエースパターと同じモデルでロフトを少し寝かせたものを用意してもらっていたんです。 ふたを開けてみると工藤キャディとの相性は抜群。ショットも好調で、初日は67で首位タイのスタート。2日目は2打差の2位タイと一歩後退しましたが、3日目に首位タイに戻ると、最終日は逃げ切って見事2勝目を挙げることができたのです。 この大会では工藤キャディとコンビを組めたことが最大のラッキーでした。そして、疲れてくると下半身が使えなくなり上体が突っ込むことを修正できたことも桑木らしいピンを指すショットが戻ることにつながったと思います。 全英女子オープンに行かない選択をしたからには、結果を残さなければならないという気持ちはあったものの、その通りの結果を残してくれた桑木。上位の選手が不在の試合でしっかりと勝ち切ったことは、残るシーズンに向けて大きな自信になりました。 翌週から3試合は上位には入れませんでしたが、難セッティングの「日本女子オープン」ではヘッド重量を少し重くしたプロトタイプのパターにスイッチし、8位タイ、翌週の「スタンレーレディスホンダ」でも初日の出遅れを2日目、3日目に取り返して7位タイ、富士通レディースは3位タイ、「マスターズGCレディース」は4位タイと自身初の4週連続のトップ10フィニッシュを記録。充実の秋を迎えていました。 そして最後の山場となったのが、伊藤園レディスからの残り3戦です。前週の「TOTOジャパンクラシック」が不発に終わったことで世界ランキングは78位と下がり、来年の全米女子オープン出場資格の75位以内から外れていました。 全米女子オープンの出場資格は開催週から9週前と開幕週時点での「75位以内」なので、25年シーズンは開幕から3戦目の「アクサレディス」終了時点で世界ランキング75位以内で終われば出場資格を得ることができます。そこにつなげるためにも、まずは残り3戦で75位以内に滑り込むことがとても重要でした。 さて、この試合から「TOTOジャパンクラシック」の途中から高校ゴルフ部の同級生だった中村優海さんが現場マネージャーとして帯同してくれるようになり、おじさんばかりだったチーム桑木に同世代の話し相手ができました。これはとても大きな変化でした。