完全アウェイの中、近江が日大藤沢をPK戦の末に下し3回戦進出
第102回全国高校サッカー選手権は31日に2回戦を実施。等々力陸上競技場で行われた日大藤沢(神奈川)と近江(滋賀)の一戦は1-1(PK4-3)で近江が勝利した。 【フォトギャラリー】日大藤沢 vs 近江 近江は昨年の選手権を経験している選手が多いとはいえ、会場は日大藤沢から1時間ほどでたどり着ける会場とあり、多くの生徒が駆け付け完全アウェイ。DF5西村想大(3年)が「全国大会の初戦なのでプレッシャーはあったし、完全にアウェイだったので飲み込まれた部分があった」と話せば、前田高孝監督も「前半は凄く硬さがあった。めちゃくちゃ相手にやられたわけではないのですが、こっちも何もできなかった印象」と続ける。 ドリブルとパスを織り交ぜた近江らしい組み立てができずにいると、前半6分には日大藤沢にチャンスが訪れる。DF4宮﨑達也(3年)が自陣からフィードを送るとMF10安場壮志朗(3年)がヘディングで左前方に展開。1トップのMF8諸墨清平(3年)がスペースに流れてクロスを上げると、ファーサイドから飛び込んだMF16布施克真(2年)がダイレクトで合わせて、ゴールネットを揺らした。 以降も日大藤沢の見せ場は続き、33分にはミドルゾーンでのボール奪取から相手DFの背後にロングボールを展開。走り込んだ諸墨がドリブルからフリーでシュートを放ったが、クロスバーに嫌われた。続く38分にはサイドチェンジから、左サイドのMF11岡田生都(3年)がカットインシュートを放ったが2点目には至らない。「2点目が取りきれなかったのも残念」と口にしたのは佐藤輝勝監督だ。 消化不良で終わった前半の出来を踏まえ、ハーフタイムに前田監督はこんな檄を飛ばしたという。「このままでは勿体ない。今、スタメンで出ているのはほとんど3年生。最後の大会なので、後悔しないよう1年間やってきたことをやろう」。選手の持ち味が出るよう交代カードも切り、後半11分には「勢いが出せる」と指揮官が評するFW13山本諒(2年)を投入し、活性化を図る。 ピッチ内外で取り組みが実り、開始直後にはDF10金山耀太(3年)が相手ゴール前に迫るなど近江らしい攻撃が出始めると、後半13分にはMF7鵜戸瑛士(3年)が右サイドからクロス。相手DFが競ったこぼれがMF8山門立侑(3年)に入ると冷静に浮き球でGKの上を突いた。 同点に追い付いても攻撃の手を緩めない。「勝ちに行った。振り切って勝ちか負けか。今までなら70、80%ぐらいの(成功する)手を打っていたけど、フィフティフィフティのどうなるか分からない、カウンターを浴びるかもしれないという手を打った」。そう振り返るのは前田監督だ。 16分には左を仕掛けた山門の大外をFW9小山真尋(3年)が上がってクロスを入れたが中と合わない。39分には中央を仕掛けた金山のスルーパスから、山本がゴール前を抜けたがシュートは枠の外。結果的に追加点を奪えず、オープンな展開になったためピンチもあったが、指揮官の意思は選手に勝利への想いを焚きつけたのは間違いない。 迎えたPK戦では「肝っ玉が据わっている。練習の時と試合の時での目つきが全く違う」と前田監督が評するGK1山崎晃輝(2年)が一人目のキックをストップ。相手が5人目のキックを外したこともあり、1-1(PK4-3)での勝利となった。インターハイ4強の日大藤沢の次はインターハイ王者の明秀日立(茨城)と難敵が続くが、後半のように積み上げてきた物を発揮できれば白星が見えてくるだろう。 (文・写真=森田将義)