大御所弁護士への「損害賠償命令」に実行犯の「逮捕」…弁護士事務所という「社会的信用」に乗せられて6.5億を騙し取られた渋谷区富ヶ谷地面師事件の「結末」
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第45回 『「全く覚えていません」認知症の“所長”と弁護士資格を剥奪された“事務員”は裁判で罪を擦り付け合う...渋谷富ヶ谷6.5億地面師事件の舞台となった弁護士事務所の所長に課された「前代未聞の賠償」』より続く
「肩書を利用されていた」と主張
かつて第2東京弁護士会の副会長まで務めた諸永にはそれなりのネームバリューがあり、その元居候弁護士だった吉永にとっては、取引相手を信用させることができる。弁護士資格を剥奪された吉永は、土地取引の代理人などをすれば非弁行為となり、弁護士法に抵触するが、事務員という肩書があれば、事実上、弁護士業務を代行できる。というより、事務所を運営しているオーナー的な存在として、吉永は諸永の肩書を利用できるのである。裁判では、臆面もなく諸永がこうも主張した。 〈吉永は、事務所の運営を全て取り仕切り、弁護士資格のある被告諸永を雇い、訴訟事件(平成29年3月当時で31件)については被告諸永を裁判所に行かせ、訴訟事件以外については、自分が直接対応して処理するなどの方法で利益を得て、諸永に給与を支払っていたのである〉 地面師集団は詐欺を組み立てる親玉を頂点に、詐取した金の受け皿としての会社や口座を用意する人物、なりすまし役やその「手配師」、証拠書類の偽造を請け負う「道具屋」などが存在するが、それとは別に弁護士や司法書士といった「法律屋」も登場する。
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