大御所弁護士への「損害賠償命令」に実行犯の「逮捕」…弁護士事務所という「社会的信用」に乗せられて6.5億を騙し取られた渋谷区富ヶ谷地面師事件の「結末」
大御所弁護士への「損害賠償命令」
事件へのかかわりについては濃淡あるが、少なくとも被害者にとっては、弁護士事務所も詐欺事件に組み込まれているとしか思えない。また、その弁護士事務所のなかに、現役の弁護士もいれば弁護士崩れの事務員もいて、そこでも役割分担がなされてきた。 そして被害者である地道たちは、弁護士事務所という社会的信用にまんまと乗せられたわけだ。判決にある〈争点(1)(被告諸永の責任)について〉は以下のように記す。 〈認定事実及び弁論の全趣旨によると、本件売買において自称呉と名乗っていた人物は、本件不動産の登記名義である呉如増のなりすましであったこと、本件登記は、本件前件申請の添付書類とされていた本件印鑑証明書が偽造であったことにより却下され、(中略)本件不動産の所有権仮登記をすることができなかったことが認められる〉 まさしく地面師事件である。裁判長の日浅は諸永の言い逃れを認めず、弁護士としての過失を厳しく指摘した。それが6億4800万円の損害賠償責任だ。 と同時に、第2東京弁護士会は17年1月30日付で、諸永に対し「業務停止6ヵ月」の懲戒処分を決定した。富ヶ谷事件はそれから3年後の2021年12月、警視庁が山口と福田を逮捕し、幕を閉じた。
森 功(ジャーナリスト)
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