3年目の円安、再び日本の設備投資を盛り上げるか-関連株に追い風も
(ブルームバーグ): 長引く円安が機械セクターなど日本の設備投資関連銘柄の追い風になりつつある。円安が一時的なものではなく、長期的なトレンドとの認識が日本企業の間で広がれば、製造拠点の国内回帰が強まり、設備投資が復調する可能性が期待されているためだ。
円相場は4月、対ドルで1990年以来の安値となる160円台を付けた。日米の金利差を背景に低金利の円を売り、高金利のドルを買うキャリートレードが活発化し、円安を加速させている。貿易額の比率を考慮し、インフレ率の影響を除いた総合的な通貨の実力を表す実質実効為替レートで見ると、現在の円の水準は変動相場制に移行した1973年以降で最低水準だ。
歴史的円安は、日本国内に製造拠点を再構築する動きを後押しする可能性がある。ソニーフィナンシャルグループ金融市場調査部の渡辺浩志金融市場調査部長は、円相場の変動が日本企業の設備投資行動に変化をもたらすまでには3年のタイムラグがあると指摘。円相場の動きは一時的ではなくトレンドの転換と企業が見極め、その後計画を策定して実際に投資するまでに時間がかかるためだと言う。
「今回の円安局面の出発点となった21年初から3年遅れとなる今年がまさに国内回帰元年となる。資本財セクターへの期待が高まる」と渡辺氏は話した。
実際、MSCIジャパン資本財株指数は今年に入り31%上昇し、東証株価指数(TOPIX)の上昇率18%を大きく上回っている。
米国と中国の覇権争いや新型コロナウイルスの流行を契機にサプライチェーンの再構築を急ぐ半導体業界では、既に日本国内で生産設備を増強する動きが始まっている。熊本県では半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場が2月に開所し、第2工場も建設する方針。北海道では、次世代半導体の開発を担うラピダスが工場を建設中だ。
製造拠点の拡充がさらに他の業界にも広がれば、産業用ロボットのファナックや安川電機といった設備投資に関連する電機・機械メーカーをはじめ、工場を建てる建設株などの業績や株価に好影響を及ぼしそうだ。