テスラの「EV墓場」が米国に出現! やっぱり原因は“直販システム”だったのか?
在庫の増減がもたらす影響
一般的な自動車の生産の流れは、まず顧客の注文に基づいて生産計画が立てられる。必要な部品が納入され、車両が組み立てられた後、ディーラーに納品される。 その後、各ディーラーで一定期間在庫された後、顧客に納品されるのが一般的である。 テスラのように直販を行う場合、ディーラーでの一定期間の在庫というバッファ(余裕)がなくなるため、生産工場に在庫を抱える必要がある。 バックオーダー(注文残)が出るほど販売が好調であれば、生産後すぐに納品されるため、在庫は最小限に抑えられる。 一方、需要の急減などで納品までの期間が長引き、生産工場で在庫が積み上がると、テスラの工場周辺で“EV墓場”のような現象が見られる事態にもなりかねない。このように、直販には販売が低迷した際に在庫管理が難しいというリスクがある。 また、ディーラーに納品せずに顧客に直販することは、販売網の構築・維持コストの削減や価格競争力の維持という点で有利であるように見える。しかし、テスラは在庫管理に多額のコストを要する高いコスト構造を抱えていることも明らかにしている。
販売モデルがもたらす変革と課題
では、テスラのオンライン販売による直販は、現在の自動車業界におけるベストプラクティス(最善の方法)といえるのだろうか。そのメリットとデメリットを考えてみよう。 まず、メリットとしては、 ・販売網を持たないことでディーラーの中間マージンをカットできる ・顧客と直接コミュニケーションを取り顧客ニーズを的確に把握できる ことが挙げられる。また、ブランディングの観点からも、テスラが目指すブランドイメージを直接顧客に直接示すことができ、ブランドへの信頼を高めることができる有効な手段である。 一方、デメリットとしては、前述のとおり ・在庫管理が複雑になる ・在庫管理のリスクをともなう ことが挙げられる。また、オンラインで簡単に注文・購入できるとはいえ、注文から納品までには一定の時間がある。 米国では、ディーラーが事前に注文を受けた新車を、顧客が好むと思われるボディカラーやオプション装備で展示しておくのが一般的だ。顧客が気に入ったモデルを見つけたらその場で購入でき、さらに古い車を下取りに出して新車で帰宅することもできる(米国ではライセンスプレートは後日郵送される)。 さらに、テスラのユーザーのなかには、修理やメンテナンスといったアフターサービスに不満を抱く人もいるという。具体的には、修理に必要な部品の入手が遅れることや、サービスセンターへの予約が取りにくいといった問題点が指摘されている。修理部品に関しては、ディーラーが存在しないことで在庫のバッファがないことは明らかだ。