なんと、がんの進行スピードや予後、「効く薬」の違いまでわかる…!専門医はがんのどこに注目しているのか?
昨今、がんにかかる人は増加しているが、死亡率は年々下がり続けているのをご存じだろうか――。「がん治療」の進化が著しいことが大きな要因の一つだ。一方で、患者側の最新医療に関する知識がアップデートされていないばかりに、手遅れになってしまうケースも残念ながら少なくないという。 【写真】 がん治療で後悔しないために、私たちが身につけておくべき知識とは何か。国立がん研究センターが、現時点で最も確かな情報をベースに作成した『「がん」はどうやって治すのか』から、そのポイントをお伝えしたい。今回は、がんの分類についての解説をお届けしよう。 *本記事は国立がん研究センター編『「がん」はどうやって治すのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
「がん」と「癌」の違い、分かりますか?
がんの大きな分類として、がんのもとになる細胞の種類によるものがあります。上皮細胞からできるがんを癌(ひらがなではなく漢字で書きます)または癌腫と呼び、上皮細胞以外の細胞から発生するがんを肉腫と呼びます。 また、血液細胞のがん(血液のがん)は造血器腫瘍と呼びます。肉腫はまれながんであること、血液のがんは診断法も治療法も固形がん(癌腫や肉腫)とは異なることから、以下、「がん」として癌腫を中心に話を進め、必要に応じて肉腫と造血器腫瘍に触れていきます。 がんの性質の違いに大きく関わる分類としては、がんの「組織型」によるものと、「遺伝子」によるものがあります。また、がんの進行の程度を表す「ステージ」という分け方もあります。順に説明していきましょう。
「進行の速さ」や「予後」を知るために必要なこと
組織型とは、がん細胞の形状やがん細胞が集まった組織の状態からがんを分類するもので、がん細胞やがん組織を顕微鏡などで詳しく調べる病理検査によって決められます。組織型と、がんの進行の速さや予後の関係はよく調べられているので、組織型を知ることは治療方針を立てるうえで重要です。組織型には多くの種類がありますが、代表的なものを紹介しましょう。 一つは、腺がんです。上皮細胞からなる組織(上皮組織)がくぼんだ形となり、体液を分泌する機能をもったものを腺組織と呼びます。腺がんは腺組織から発生するがんで、胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆嚢などにできます。 胃がんは、ほとんどが腺がんですが、そのなかでも細胞の特徴から大きく分化型と未分化型に分けられます。一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が速い傾向があるといわれています。大腸がんも多くが腺がんですが、さらに乳頭腺がん、管状腺がん、低分化腺がん、粘液がん、印環細胞がん、髄様がんなどに分けられます。