東大日本史「憲法を捉え直す」一大トレンドの背景 ステレオタイプな思考を打破する試みがある
大学入試の問題は、いつの時代も同じというわけではありません。問題の形式面での流行もさることながら、出題されるテーマが時代の影響を受けていることも少なくないのです。大学入試問題を作成するその大学の先生方の、世相を捉えた問題意識が反映される世の中に対するメッセージでもあると考えられます。 『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 傑作選』を上梓した予備校講師の相澤理氏が、面白すぎる東大日本史を解説します。 【写真】安倍元首相は対中強硬派だったからこそ、硬軟両様の構えで習近平氏と対峙できた
※本記事は『歴史が面白くなる 東大のディープな日本史 傑作選』の内容を抜粋し、加筆修正して再構成したものです。 ■凝り固まった見方や考え方から自由になる 前回の記事(「東大より攻めてる? 『上智大の日本史』問題の凄さ」参照)では、国家的事業の裏に隠された政治目的を問う上智大学の日本史の問題や、皇位継承の安定に摂関政治が果たした役割を問う東大日本史の問題を取り上げて、歴史的な視点から現代を見ることの意味について説明しました。
紆余曲折を経て嫡子継承が確立した歴史を知ることは、現代における皇位継承のあり方を考えるうえでも、新たな視点を与えることになるでしょう。 「新たな視点」、それは、ステレオタイプな思考を打ち破るものです。歴史の学びは、過去と現在の違いを通じて、凝り固まった見方や考え方から自由になるという意味を持つのです。 東大日本史の問題は、自分がとらわれていたステレオタイプな思考に気づかせてくれるところにこそ、面白さがあります。今回もそのような問題を紹介しましょう。
〈問題〉 次の文章を読んで、次の設問に答えなさい。 一八八九年二月、大日本帝国憲法が発布された。これを受けて、民権派の植木枝盛らが執筆した『土陽新聞』の論説は、憲法の章立てを紹介し、「ああ憲法よ、汝すでに生れたり。吾これを祝す。すでに汝の生れたるを祝すれば、随ってまた、汝の成長するを祈らざるべからず」と述べた。さらに、七月の同紙の論説は、新聞紙条例、出版条例、集会条例を改正し、保安条例を廃止すべきであると主張した。