筒香がベンチ裏で逆立ち。WBC密着映画完成で後遺症組へ「見て奮い立って」
自らカメラを持ち監督を務めた三木氏は、選手集合の初日に「皆さんに迷惑をかけないように付きます。記録に残しておきたい大会です。ぜひ協力をお願いします。何かあれば、すぐにカメラを止めますので遠慮なく言って下さい」と挨拶。横浜DeNAの職員時代に球界初のドキュメント映画を作った経験のある三木氏でさえ「受け入れられるどうか不安でした」と言うが、「暑い寒いのたわいのない会話」から積極的にコミュニケーションを取りながら、選手との信頼関係を構築してカメラを回し続けたという。 ドキュメンタリー映画にありがちな、スーツに着替えて大会を振り返るようなインタビューカットは一切ない。「臨場感を出すために、聞きたいことはすべて、その場で聞いた」そうで、約100分間の映像時間が短く感じるほど全編が臨場感と迫力に満ち溢れていた。 編集の時点で、放映許可が下りないシーンがあったり、ブルペンやトレーナー室への立ち入りが禁じられるなど、ある程度の制約の中でカメラを回したらしいが、三木氏が伝えたかったという「選手の素顔や人間臭さ」は、存分に映し出されていた。 製作側として、どこをクローズアップするかで葛藤する場面も多く、例えば、2次ラウンドのキューバ戦の5-5で迎えた8回一死一、三塁で、そこまで2安打の巨人・小林誠司に代え、小久保監督が、思い切って代打にソフトバンク・内川聖一を送り、劇的な勝ち越しの犠飛につながるのだが、この局面では、外れた小林か、出ていく内川か、どちらを追いかけるかにも悩んだという。 「地味かもしれませんが、平野投手ら中継ぎ陣が本当に頑張った大会でした。平野投手に、もっとカメラを向ければ良かったという反省もあります」 そして三木氏は、“WBC後遺症”に、今なお苦悩しているヤクルトの山田哲人、巨人の小林、横浜DeNAの筒香るらに熱いメッセージを送る。 「強化試合では負けているのに、あまりにあっさりとしている若い世代の雰囲気に、私たちのようなおじさん世代には『どうなんだろう?』と疑問がありましたが、戦いが進むうちに、彼らの切り替える力を目の当たりにして、『この人たちは本当にプロなんだ』と関心させられました。青木選手と、いつも大きな声を出し続けた松田選手のリーダーシップ。どんどんチームワークも強くなりました。 WBCが終わり、後遺症と呼ばれるほど調子を落として今も苦しんでいる選手もいます。山田選手や小林選手、筒香選手もそうかもしれません。WBCが関連しているのかどうかはわかりませんが、選手には、ぜひこの映画を見てもらって奮い立ってもらいたいんです。『俺らにはこれだけの力があるんだ』と」 三木氏は、選手全員に完成したDVDを渡した。そして、本編では、あえて辞退したことにも触れなかった日ハムの大谷翔平にも見てもらい「侍の戦いを知って欲しい」という。 なお、映画は、7月1日から7日までの1週間の限定上映となり、新宿バルト9、横浜ブルク13など、全国の主要都市10館で上映される。また8月には「ファインプレー&ホームラン集」「全円陣映像」などの特典映像付のDVDが発売される。