「一生の固定客を増やす」まちゼミ伝道師 松井洋一郎さん
「一生の固定客を増やす」まちゼミ伝道師 松井洋一郎さん THEPAGE大阪
商店街の店主たちが講師となり、消費者に専門情報を提供する地域の学びの場「まちゼミ」。全国で導入が相次ぐ新しい商店街活性化事業を提唱したのが、松井洋一郎さんだ。愛知県岡崎市で化粧品店を営む傍ら、「まちゼミの伝道師」として日本列島を駆け巡る。商店街は元気であってほしいという期待とは裏腹に、なかなか低迷に歯止めがかからない。まちゼミに地域再興の大きな流れを作り出すどんなパワーが秘められているのか。大阪市東住吉区の駒川商店街振興組合の研修会で講演するため来阪した松井さんに、まちゼミの理論と実際を聞いた。
まちゼミとは固定客を獲得する運動
──「岡崎まちゼミの会」代表で、経済産業省のタウンプロデューサーなどを務めていますが、地元でまちゼミを始めたきっかけは。 松井:私は岡崎市中心部の商店街で92年前、曽祖父が創業した化粧品店の4代目です。かつてはにぎわいのある商店街でしたが、郊外型大型ショッピングセンターなどに押され、徐々に活気が失われていく。25年前、後継者として戻ってきた後、起死回生を図り、商店街の仲間といろいろ試しました。歩行者天国、フリーマーケット、アートや音楽の催し。しかし、イベント当日は人がやってきても、にぎわいは持続しませんでした 人を集めるためだけの一過性のイベントはもうやめよう。まちは中小零細の店舗や事業所が集まったエリア。個々が強くなり、お客様に必要とされる店舗でなければ生き残れないと気付いた。商店街の店は店内に入ると商品知識が豊富な店主がいて、気持ちのいい空間なのに、入りにくい。この弱点をなんとか解消しようと2003年、10店舗が参加し、各店舗で文化講座を開いたのが、現在のまちゼミの原型になりました ──まちゼミの最大の特色は何ですか。 松井:「まちゼミとは、各店舗が新しい固定客を獲得する運動です。各店の売り上げは『客数×単価』で決まる。販売形態が多様化しているうえ、商業施設全体の売り場面積が増加している以上、売り上げ単価を上げるのは容易ではない。地域商店街では各店舗の売り上げの大半は固定客が支えていいますが、大型店が進出し、ネット販売の比重が高まると、離店客が発生します。離店客よりも新しいお客様の数が増えなければ、個店の売り上げはじり貧になり、やがて廃業せざるを得ない。しかし、まちゼミで新しい固定客を獲得できることが分かってきましたので、自分たちの手で商店街を再生できるかもしれないという方向へ意識の流れが変わってきました」