日本の投信「パッシブ化」が加速、低コストで優位に-オルカン効果も
(ブルームバーグ): 日本の公募投資信託市場で、市場指数(インデックス)に連動する運用成果を目指すパッシブ投信の存在感が急速に高まってきた。少額投資非課税制度(NISA)などを背景に個人マネーが流入する中、運用力を売りにするアクティブ投信と比べたコストの低さが強みとなっている。
野村総合研究所の集計によると、追加型株式投信(上場投信を除く)のうち、パッシブ投信の残高は5月末時点で約43兆円と1年間で6割増加。アクティブ投信を含む残高全体の34%と、データをさかのぼれる1997年3月以降で最高となった。
パッシブ投信は機械的な運用ができる分、アクティブ投信に比べて運用コストが低いのが特徴。野村総研の推計によると、5月末時点の信託報酬率の残高加重平均は、アクティブの1.18%に対し、パッシブは0.23%と大幅に低い。
コストの安いパッシブ投信を求める動きは、国境を越えた現象だ。アクティブ戦略を採用する運用会社が、ビジネスモデルの変革を迫られるほどの地殻変動も起きている。日本の投信市場も同様に、低コストがものをいう市場に変貌を遂げつつある。
野村総研の金子久チーフリサーチャーは、個人投資家の間で、「投資信託に対するイメージが変わり、長期投資に付随する投信のコストなどへの認識が高まってきたため」とパッシブ投信人気の背景を分析する。
「オルカン」など2本で3割
年初からの新たなNISAの適用開始後は、パッシブ優位がより鮮明だ。野村総研によると、1-5月の純資金流入額全体のうちパッシブの占める割合は約7割に上った。
人気を象徴する存在が、世界株に投資するインデックス型投信「eMAXIS Slim(イーマクシススリム) 全世界株式(オール・カントリー)」(オルカン)と、同じシリーズで米国株に連動する「米国株式(S&P500)」だ。
このシリーズは業界最低水準の運用コストを目指し、三菱UFJアセットマネジメントが運用する。過去1年のパッシブ残高の増加額16兆円のうち、同社の2ファンドの増加分が約3割を占める。