震災契機に導入進む再生可能エネルギー、地熱発電は本格普及にまだ時間
国が普及を図る地熱発電の開発がなかなか進まない。熱源の多くが国立公園内にあるなどの立地条件、開発に要する費用や期間が新規参入を阻んできた。規制緩和やリスクマネーの供給などの措置が講じられ、実績の芽は出始めているが、本格的な普及に結び付くにはなお時間がかかる。息の長い支援策と地道な案件発掘という、官民で歩調の合った取り組みが鍵となりそうだ。 再生可能エネルギーは原子力の代わりになれる?
導入進む再生可能エネルギー
2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、国内の原発は次々と停止、電力の供給量が激減する中、国は太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーの導入を促してきた。2013年は、節電の定着と再生可能エネルギーの拡大が相まって、震災後初めて全原発が止まった状態で冬の需要期を乗り切った。 再生可能エネルギーの普及は2012年、電源別に単価を定め、長期にわたって電力会社が電気を買い取る、国の「固定価格買取制度」が呼び水となった。太陽光は、当初1キロワット時当たり42円で10年間買い取るとされた(出力10キロワット未満の場合)。設置にかかる導入費を10年ほどで回収できるよう、補助金を出すなどしたことにより、住宅への設置が進んだ。さらに、出力が1千キロ(1メガ)ワット以上と大規模な発電所「メガソーラー」が新規参入した企業により各地に建設された。 比較的発電コストが安く、昼夜を問わず発電する風力発電所も、全国で設置が相次いだ。安定して強い風が吹く洋上に設ける取り組みも続いている。
世界で評価される地熱開発、国内で遅れる理由
一方、地熱発電は2015年度までの5年間、導入実績に乏しいのが実情だ。日本の地熱は資源量で見れば、米国、インドネシアに次いで世界第3位の2300万キロワット。発電に用いる蒸気タービンの世界シェアも、東芝などの日本勢が7割を占めるとされる。出力33万キロワットと世界最大規模を誇るインドネシア・サルーラ地区の発電所にも日本の総合商社や電力会社が参画し、世界で日本の存在感は決して小さくない。 ただ、国内に目を転じると、地熱の設備容量は合計52万キロワットで、原発などを含む日本全体の総電力量に占める割合は0.3%程度に過ぎない。 日本で地熱開発が遅れている背景の一つに立地の事情がある。資源の大半は国立・国定公園内に眠っているために開発が規制されていたり、近くに温泉街があるために枯渇を懸念する反対運動が起きたりといったことが課題となってきた。 このため国は2012年に規制を緩和し、外側から公園の地下の熱源に向かって斜めに掘ることを認めた。地表付近の環境に悪影響を与えないことや、地元との円満な関係といった条件付きだが、開発の気運の醸成にはつながっている。