震災契機に導入進む再生可能エネルギー、地熱発電は本格普及にまだ時間
秋田・山葵沢地熱は2019年に発電開始
しかし、参入障壁は他にもある。地熱開発に必要な投資の大きさと期間の長さだ。地熱は、太陽光や風力と違い、地下の資源で不確実性が高い。資源量を確かめるため、井戸を何本も試掘し、それだけで億単位の費用がかかる。さらに、そうした試掘の実証段階から生産に進む商業段階まで10年程度かかる。そのため企業などの投資は、発電までの工程が比較的容易な太陽光や風力の建設に集中する結果となった。国内の地熱発電の設備容量は2015年度時点で約52万キロワットと、震災の前と後でほとんど変わっていない。 国は2030年までに90万~140万キロワットに拡大する青写真を描く。この達成に向け、資源開発を支援する独立行政法人、石油・天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)が出資や債務保証を通じ、企業の開発に伴うリスクを資金面で軽減することで普及に弾みを付けようとしている。 JOGMECによると、助成金を交付して初期段階の地質構造調査を進める案件は、2014年度に23件、15年度に20件あり、実績を伸ばしている。このほか、債務保証の対象案件となっている秋田県の大規模な地熱発電施設「山葵沢(わさびざわ)地熱発電所」(出力4万2000キロワット)も昨年5月に建設が始まった。発電開始は2019年とまだ先だが、地道に成功例を積み増していくことが期待されている。