大幅減益の日産はこのまま復活できないのか、カギを握るのは不振の米国に投入した新商品とEV最重要技術の「収穫」
■ 米国不振の理由「モデルが古い」「ハイブリッドがない」は本当か 決算発表で内田誠社長が第一要因として挙げたのは「中核モデルが思うように売れていない、あるいは収益を稼げていないこと」だった。有り体に言えば販売するクルマが魅力に乏しく、ユーザーの人気を得られなかったということだ。 人気のない商品を無理にでも売らなければならない場合、ディスカウントに頼ることになる。アメリカのリース金利の業界平均は7%台だが、日産はコンパクトSUV「ローグ(日本名エクストレイル)」、ミッドサイズセダン「アルティマ」など複数のモデルについて金利0%キャンペーンを実施。買い切りの顧客にも高額のキャッシュバックを行うことで何とか販売戦線を維持している状況だ。 内田社長は「新商品をタイムリーに出すことができなかった。アメリカにハイブリッドカーを投入できていなかった影響もある」と、商品展開の遅れが主な原因であり、反省点という見解を示した。状況把握としてはその見解は間違ってはいないが、現実を直視したものとは言い難い。 まずはタイムリーに新商品を出せなかったという点について。日産のアメリカ向けモデルを見ると、デビューから時間が経ち新味に欠けるのは確かだ。が、アメリカの自動車市場はユーザーの支持を取り付けられた商品はデビューから時間が経っても販売台数はそうそう落ちないという特質を有している。販売から時間が経過した方が売れ行きが伸びるケースも珍しくない。 アルティマの現行モデルは2019年発売の6年目。販売を頑張るべき2020年にちょうどコロナ禍が発生するという間の悪さはあったが、その影響から脱した後も販売は低調。旧型モデルに比べて大幅減という状況を解消できなかった。 同じことは2020年発売の現行ローグにも言える。旧型は年間販売40万台超を2度達成し、最終の2019年も35万台が売れた人気モデルだったが、フルモデルチェンジ後は1度も30万台を超えられず、今年の1-10月の販売を見ても前述のように金利0%のキャンペーンを行いながら年間20万台ラインをようやくクリアできるペースという有り様だ。 アメリカで日産の販売が苦境に陥っているのはモデルが古いからではなく、現行モデルがそもそもアメリカのユーザーに受け入れられていなかったからと見るのが妥当である。 不振をハイブリッドカーのラインアップがなかったせいにするのも、釈明としては一見もっともらしいがその実、正鵠を射たものではない。 BEV(バッテリー式電気自動車)の需要が停滞し、ハイブリッドが天下を握ったかのような報道が多いので錯覚しがちだが、アメリカ市場におけるハイブリッドカーの販売比率は今後上昇が見込まれるとはいえ、現状ではせいぜい全体の1割程度である。 スバルのコンパクトクロスオーバー「クロストレック」のようにハイブリッドがなくとも販売が歴代最高を記録しているモデルもある。ハイブリッドがないと販売面でお話にならないというほどの状況ではないのだ。 「モデルが古いから」「ハイブリッドがないから」という不振の理由付けは、それだけでは到底説明がつかない。体面のため対外的にそう言っているだけで日産社内ではきちんと検証されているというのであればいいが、もし本当にそう分析しているのであれば責任を負いたくない研究開発、営業、経営企画が本当の話を上層部に伝えておらず、上層部もその報告をうのみにしている可能性がある。