EVはオフロードで重すぎ? 水素の可能性を信じるイネオス グレナディア・ハイドロジェンの試作車へ試乗
バッテリーEVへ有利な法規制が変われば量産も
水素の生産会社を傘下に収める巨大企業、イネオス。AUTOCARの読者なら、豊かな資金力を活かし、オフローダーを独自開発したことをご存知だろう。しかし彼らも、水素の将来性を信じつつ、それを燃料とするクルマの需要が見込めないことを認めている。 【写真】EVはオフロードでは重すぎ? グレナディア・ハイドロジェン 日韓独の水素FCV 最新・電動Gクラスも (149枚) だとしても、イネオス・オートモーティブは、グレナディアの水素燃料電池車(FCV)を試作した。最高経営責任者(CEO)を務めるリン・カルダー氏は、バッテリーEVへ極めて有利な法規制が改定されれば、2030年代に発売される可能性があると話す。 「将来的には、水素が事業を構成する強力な一部になる可能性が高いでしょう。でも、まだ先のことですね」。と説明するカルダーだが、水素FCVは燃料の充填時間が短く済み、既に充分な航続距離も得られることを、繰り返し主張する。 「バッテリーEVは、オフロードでは重すぎ、牽引能力も制限されます。充電器がない大自然の中では、充電の問題も生じます」。グレナディアのような大型のオフローダーには、水素燃料電池が好適だと考えている。 カラフルに塗られたプロトタイプを仕上げるのに、要した期間は僅か11か月。完成したのは1台のみだが、水素FCVの将来性と可能性を証明するため、世界を巡るプロモーション活動が計画されているそうだ。
燃料電池はBMW社製 ビデオゲームのように簡単
イネオスは、水素FCVが緊急部隊やNGO、国境警備隊などで活躍できると想定。BMWが開発した115kWの燃料電池システムを、ボンネット内に搭載した。ラダーフレーム・シャシーには、2kgの水素タンクが2本収まっている。 小さな駆動用バッテリーは、荷室のフロア下に搭載。プロトタイプの航続距離は、現状では200kmだが、量産仕様ではこの3倍が計画されているとのこと。 燃料電池以外のドライブトレインは、従来のグレナディアと同一だという。駆動用モーターは3基載り、デフロックを備えるフロントアクスル側は1基、リア側は左右個別に2基が受け持つ。 今回、このプロトタイプへ試乗したのは、ロンドンの北、ミルブルックにあるオフロードコース。まだ防水性が完璧ではないということで、深い水たまりは避けることになったが、かなり本格的なセクションが続いた。 グレナディアの開発が進められた、オーストリア・シェークル峠の悪路と比べれば、だいぶ優しいだろう。とはいえ水素FCVのグレナディアは、簡単な運転操作だけで、手強そうな地形をクリアしていく。まるで、リビングでビデオゲームをしているように。 見るからに危険そうな場所でも、滑らかに前へ進んでいく。筆者は、ステアリングホイールとペダルを操っていればいい。