朝ドラ『虎に翼』の寅ちゃんのモデルは、「盛り」なしのぶっ飛びキャラだった
4月1日から始まったNHKの朝ドラマ『虎に翼』。開始早々、米津玄師による主題歌のOPや、ヒロイン・猪爪寅子(いのつめともこ)役の伊藤紗莉の明るくパワフルで安定した演技力、寅子の不条理なことがあると発する「はて?」という口ぐせがSNSで話題になるなど、どハマりしている人も少なくないようだ。 【画像】話題の『虎に翼』の寅ちゃんのモデルってどんな人? ・「女性が今よりも生き辛い時代にも関わらず、明るく自分の道を突き進む寅子を見ていると朝から元気になる」 ・「結婚したくないが通らない時代。世代は違うけど私も親にいつ結婚するのかと度々言われ続けていて、わかりみ過ぎて毎朝泣いてしまう」 ・「結婚を押しつけ、男性の前ではスンとしていた母親が、女性蔑視発言に一喝した場面はスカッとした」 ・「寅子はもちろん、登場する女性たちそれぞれに厳しい現実がありそうな気配。毎朝気になって見逃せない」 など、寅子にエンパワーメントされたり、寅子の周囲の女性たちの生き様に一喜一憂する声がネット上でも飛び交っている。 ところで、『虎に翼』の寅子のモデルとなった三淵嘉子氏とは、実際どんな人生を歩いた女性だったのか。調べてみるとオリジナルストーリーが展開されるドラマの流れとは若干異なるものの、リアルな三淵嘉子の人生もまた波乱万丈で、いろいろな意味で「ぶっ飛んだ」人だった。前編では、嘉子の少女時代を中心に彼女の注目エピソードをご紹介しよう。
嘉子の人生に関わった135人超の追悼記を読んでみた
“虎に翼”のヒロイン・猪爪寅子のモデルは、日本初の女性弁護士から裁判官となり、家庭裁判所の母となった三淵嘉子氏だ。女性には参政権すらなく「女性の幸せは結婚」「女性は結婚すると夫の許可なしでは法的なことが一切行えない『無能力者』になる」という時代、自ら女性法曹の道を切り開いたトップランナーのひとりである。 嘉子が亡くなった後、関係者によって編まれた追悼文集『追想のひと 三淵嘉子』(絶版)は、彼女が各所で記した様々な文章に始まり、嘉子の親族、幼馴染や学友、職場の仲間、趣味の友人、そして現在の法制度を1から作り上げた戦後の法曹界の名だたる人々が、嘉子について思い出を寄せている。その数、なんと135人オーバー。これだけで彼女がいかに戦後の法曹界になくてはならない存在だったかがわかるのではないだろうか。 そこには嘉子の弁護士・裁判官・法律家としての功績紹介にとどまらず、プライベートでの嘉子の様子や学生時代のお転婆エピソードなどが満載。とんでもなく賢いが、ときにミーハーで迷信深いところもあり、周囲を「あっ」と驚かす事件を巻き起こす。仕事仲間にはいつも穏やかに接するのに、家族にはわがままで独裁的。そして2人の夫への深い愛情など、様々な角度から嘉子について語られていて、非常に興味深かった。 この追悼記と女性弁護士として嘉子の後輩となる佐賀千恵美氏による『三淵嘉子の生涯』(内外出版社)を読んでみた感想は「まるでマンガみたい」だった。とにかく突き抜けた人なのだ。ドラマ内で紹介されるかどうかはわからないが、いくつか嘉子のおもしろ・壮絶エピソードをご紹介しよう。