BEV化の促進でバス・タクシーの車種が多様化する! 日本車天国だった香港タクシーにも変化
香港では複数車種をBEVタクシーとして導入予定
香港のタクシーといえば、長いことトヨタ・クラウンや日産セドリック、その後のトヨタ・クラウンコンフォート、そしてJPNタクシー改め(日本ではなく香港なので)トヨタ・コンフォート・ハイブリッドタクシーなど、日本車が代々受け継いできたのだが、最近ではタクシー車両のBEV(バッテリー電気自動車)化なども進むなか、コンフォート・ハイブリッドタクシーをメインに車両の多角化が進んでいた。 【画像】香港市内を走るトヨタ・コンフォートタクシーの画像を見る そのなか、報道によると2024年12月中旬、香港政府はフランチャイズとなるタクシー及びバスのBEV化をめざすことを発表。充電施設などの環境整備を進めるとともに、車両調達支援として6億香港ドル(約120億円)を投じることを発表した。なお、香港政府は2050年にクルマ(タクシーやバス以外も)からの排出ガスゼロ、そしてカーボンニュートラルを達成するとの計画を立てており、今回の発表はその一環となるようだ。 興味深いのは、報道では今回の発表は予定より遅かったといわれている点だ。その背景として「BEVタクシーやバスとして選択するBEVの選択肢、つまり市場に出まわっている車両が少なかった」ことがあるとしている。 香港といえば、すぐ隣に中国本土となる広東省深圳市を本拠地とするBYDオート(比亜迪汽車)があるので、筆者は「香港のバスやタクシーがオールBYD車化(つまりBEV化)するのは時間の問題」と考えていたのだが、選択肢を一択にしないというのはじつに興味深い。
BEV化により車種ラインアップが拡充される
かつて、中国の北京市にBEV路線バスが走り始めたころ、個人的な興味もあったので市内で乗りまくったことがある。北京市といえば、地元北京汽車系のFOTON(北京福田汽車)があるので、そこの車両ばかりと思っていたのだが、広東省のバスメーカー車両など意外なほどバラエティに富んでいた。 広州市では地元広州汽車とBYDオートとで合弁会社を設立し、地元製造のBYDバスが急速に普及していたので、中国すべての都市で共通とはいかないのかもしれないが、公平性を期して多岐にわたる選択肢のなかから選ぶというのが中国ではあるようで、その影響を香港も受けているのかもしれない。 地元テレビニュースの映像を見ていると、選択肢とされたBEVタクシーが集まっている映像が映り、そこにはBYDの車両が目立つ一方で、上海汽車の車両などもあり、たしかにバラエティに富んだものとなっていた。バスの分野では香港名物ともいえるダブルデッカー(2階建て)バスに、BYDのBEV車両がすでに導入されているが、こちらも選択肢が増えている様子。 世界的にはイギリスのロンドンのように車両が統一されることは少なく、バラエティに富んだものとなっている。日本は現状だとタクシー専用車両としては、トヨタのJPNタクシーしかないのだが、今後長い目で見れば、タクシー車両のBEV化は日本でも進むものと考えており、そうなれば、タクシー車両の多角化も進むのではないかと考えている。バスに関しても近い将来、日系バス車両はICE(内燃機関)車であっても一択になるのではないかとされている。 バス車両のBEV化へ向けた動きは進んでおり、すでに多くの事業者で試験導入レベルでありながらも、中国系を中心とした複数メーカーの車両が導入されている。 タクシーについても日本車以外に中国や韓国系メーカーの車種まで幅広く選択することになるのか、日本車一択になるのか、ある日系メーカー車のみとなるのかといった、「日本のタクシーはどうなるのかなぁ」ということを考えさせられるトピックであった。
小林敦志