「命が尽きるまでフルスイングで生きる」 森永卓郎さんが明かした“目標”は「打倒イソップ」と「CDデビュー」
自分が楽しいと思うことだけを思い切りやる
ここまで述べたように、いま私がいま一番楽しくて、前向きの気持ちになれるのが、寓話の創作をしているときだ。特に創造の泉が噴出して、次々に新しい物語が生まれ出てくるときの興奮は、何よりも大きい。それが私の免疫を高めていると思えてならない。 もちろん、これだけで、いつまでもいまの拮抗状態がずっと続くとは考えていない。がんという病気で「即死」することは稀だが、悪化し始めると、あっと言う間に命を落とすことも事実だ。最近、ご主人をすい臓がんで亡くした漫画家の倉田真由美さんの話を聞くと、亡くなる1ヵ月前までは、とても元気で自転車にも乗っていたし、亡くなる前日にはまぐろの刺身を食べていたとのことだ。免疫細胞とがん細胞が「関ヶ原の合戦」を続けるなかで、少しでも戦力バランスが崩れてがん細胞が優勢になると、一気に雪崩のような現象が起きて、命を落としてしまうのだ。 だから、正直言って、私は3ヵ月先に確実に命が続いているとまでは思っていない。どうなるかは運も大きいと思う。また、いま莫大なコストをかけて延命をしているので、資金が底をついたら、そこで治療は、終わりだ。どう考えても、あと十年生き続けることは難しい気がする。 だから、命が尽きるまでの期間は、つらいこと、苦しいことをせずに、自分が楽しいと思うことだけを思い切りやる。フルスイングで生きるのだ。 実は、寓話作家としてイソップを超えるという目標だけでなく、いま私は、実現すべきテーマを複数抱えている。例えば、いま運営している「B宝館」という私設博物館を世界文化遺産にすること。「マジョレット」というミニカーの図鑑を作ること、そして歌手としてCDデビューを飾ることも企んでいる。幸いなことに、いまは体調が絶好調なので、これらの課題は、リアルに進んでいる。病気なのに何をやっているのかと思われるかも知れないが、歌手活動も、すでに次のステージの予定が決まっている。 命が尽きるまで、フルスピードで走り続け、運命が尽きた日に、前向きに倒れる。それが、いま私が考える「ガンとの向き合い方」なのだ。 第1回【「三途の川がはっきりと見えた」がんで余命宣告の「森永卓郎さん」…医療費「毎月120万円」の先に見据える「病は気から」の境地】では、がん発覚から治療に至るまでの経緯と心境を森永氏が詳しく語っている。
デイリー新潮編集部
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