「名取洋之助写真賞」に福知山出身・藤原昇平さん 都営団地で暮らす人たちの何気ない日々捉え
主にドキュメンタリー分野での新進写真家の発掘と活動の奨励を目的にした「名取洋之助写真賞」に、京都府福知山市上篠尾出身の藤原昇平さん(37)=東京都在住=の「東京オアシス」が決まった。都内にある巨大な都営団地で暮らす人たちにスポットを当てた作品で、藤原さんは受賞を喜ぶとともに、「多くの人たちに写真を見てもらうきっかけができて良かった」と話している。 同写真賞は、公益社団法人日本写真家協会が主催。ドキュメンタリーフォトの祖ともいえる名取洋之助氏(1910年~62年)にちなんだ賞で、40歳までの写真家を対象としている。 19回目となる今年は全国のプロ写真家から大学生までの21人が出品した。応募規定は30枚1組の組み写真で、同協会長ら3人が審査し、名取洋之助写真賞1点、同写真賞奨励賞1点を選んだ。
通い詰めて打ち解けありのまま写し出す
藤原さんの作品は、東京都新宿区にある老朽化した都営住宅「戸山ハイツ」で暮らす住民たちによる井戸端会議や団地内の盆踊り、誕生日会などの様子のほか、部屋で過ごす住民の何気ない姿などを捉えている。 藤原さんは2018年春から戸山ハイツに通い、写真を撮り続ける。最初は団地の住民から歓迎されなかったが、住民たちのポートレート写真を撮ってプレゼントしていくうちに打ち解け、受け入れられるようになったという。 審査員の総評では、「人間味あふれる切り撮りで、人々の暮らしを生きいきと描いている。どこか寂しく、しかしほっこりとした空気感が写し出されているのは、撮影者と被写体の絶妙な距離感が成せる技である」との評価を受けている。 藤原さんは福知山高校卒業後、立教大学を経て、2013年から18年まで神戸新聞社で記者として活躍。専門学校でドキュメンタリー写真を学び、現在は都内で会社員として働きながら、写真制作をライフワークとしている。 今回の受賞については「大変光栄で、住民のみなさんには温かく迎え入れてもらいました」と言う藤原さん。「高齢化が進む日本の縮図である戸山ハイツは、メディアではネガティブに描かれることが多いですが、ポジティブな視線で捉えることは、若い世代にも希望をもたらす重要な意味があると考えています」と話している。