テスラの充電事業見直し、バイデン政権のEV戦略に影響も
(ブルームバーグ): 電気自動車(EV)メーカーの米テスラが充電ステーション事業を見直すことで、EVを推し進めるバイデン政権の目算が外れるかもしれない。
同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は最近、テスラの充電ステーション「スーパーチャージャー」のチームをほぼ全廃することを決めたと事情に詳しい関係者が4月30日にブルームバーグ・ニュースに語った。同CEOはこの決定を認めておらず、説明もしていないが、充電ネットワークの拡張を遅らせると表明した。
テスラは昨年2月、米国で展開している同社の充電ネットワークを他の自動車メーカーに開放し、全米に置く充電ステーションの少なくとも7500カ所を2024年末までに全てのEVユーザーが利用できるようにするとの取り決めをホワイトハウスと結んでいた。
テスラの方針変更で11月の大統領選での再選を目指すバイデン大統領のEV戦略に狂いが生じる可能性もある。大統領選ではまた共和党の指名獲得を確実にしているトランプ前大統領がEV批判を繰り返し、自身が当選しなければ自動車業界は「血の海になる」と述べ、物議を醸している。
バイデン政権の代表的な気候変動対策であるインフレ抑制法(IRA)の重要な一角を占めるのが、国内のEV・バッテリー製造産業の育成を目的とした税控除だ。バイデン大統領はまた就任1年目に署名した超党派インフラ投資法のプログラムを通じて、EV充電器に75億ドル(約1兆1700億円)を割り当てている。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官はテスラの決定に関し具体的なコメントは避けたが、EV充電インフラへの投資を促進するために政権が達成した進展に触れ、米国はテスラだけに頼っているわけではないと指摘。「複数の企業が主役となっている進化し競争の激しい市場だ。1社だけはない」と述べた。
ブルームバーグは、テスラがシニアディレクターのレベッカ・ティヌッチ氏を含む約500人のスーパーチャージャーチームのほぼ全員を対象とする人員削減を行ったと報道。バイデン政権が50万基のEV充電ネットワークを構築するという目標を達成できるかどうかを巡り疑問が生じている。ティヌッチ氏は外部とのパートナーシップを築く上で主導的な役割を果たしていた。