【JFL】クリアソン新宿のサラリーマンプレーヤー2人が国立を駆ける「死ぬときに思い出す」
今年も2人のサラリーマンアスリートが国立の舞台を駆けた。7日にFCティアモ枚方戦でJFL新記録1万6480人を動員したクリアソン新宿のDF千葉丈太郎(28)とMF高橋滉也(28)。クラブが初の国立開催を実現した22年以来の2年ぶりの同時先発で、千葉が3バックの右、高橋が右のワイドを務めた。 2人は東京学芸大時代からのチームメートで、クリアソン新宿でも6季目。クラブが進化を遂げる中で、「クリアソン新宿らしさ」を体現し続ける。クラブと全く関係のない企業で働いているのは2人だけだ。千葉はコンサルティング会社「アビームコンサルティング」、高橋は人材・広告系「マイナビ」で平日は働いている。 プレー期間10年目に突入した2人は、対照的なサッカーキャリアを歩んできた。千葉は都立駒場から1浪して東京学芸大へ進学。中高の社会科を専攻する、いわゆる「一般科」で教員を目指していた。仙台出身の高橋は、街クラブの雄、塩釜FCから現役で同大に合格し、体育系学科、通称「体育科」を選んだ。プロサッカー選手になることを目標としていた。高橋が1年からトップチームで出番を得た一方で、千葉は3年まで試合に絡めなかった。 大学4年で就職活動をして「アビーム-」に入社することが決まっていた千葉は、社会人でもサッカーを続けようと考え、知り合いをたどって当時関東2部リーグへの参入が決まっていたクリアソン新宿の門をたたいた。その際、JクラブやJFLクラブへの入団がかなわず、サッカーで生きていくことを諦めて就職活動に切り替えた高橋を誘った。そろって加入が決まり、社会人でも同じチームで活動することになった。 平日は終業後に練習、土日は試合。そんな少し忙しめな社会人サッカーライフを送っていると、クラブは3年でJFLに到達。J3昇格を目指して元プロや有望な新卒選手を次々と獲得し、今季からは練習時間も午前中に変更となった。当初は多かった「サラリーマンプレーヤー」はみるみる減っていった。 2人に関しては、ともに理解のある職場だったこともあり、サッカー優先の時差勤務を許可されているという。高橋は「午後2時まで全部抑えてもらっています」と感謝を示す。千葉の会社は国立に社員を100人も動員してくれたといい「ベンチに入らなかったら顔見せできない」とモチベーションも上がった。高橋も「『(試合に)出るよね?』って圧をかけられました」と笑いつつ「統括部長のような偉い人まで来てくれました。ありがたいです」と感謝の言葉を口にした。 3度目の国立開催を終えて千葉は「サッカー選手でこの空間を感じられるって本当にない。死ぬときに思い出すと思います」。高橋も「本当に当たり前ではない。特別感はあります」とかみしめた。 うれしい出会いもあった。1-4で敗れた相手FCティアモ枚方GK富沢凜太郎(22)は5期下の大学の後輩だった。学生時代、関わりは全くなかったが、サッカーを長く続けてきたからこその交流。国立のピッチで真剣勝負を繰り広げ「JFLでこんなに良い環境でやれることはない。開催してくれて感謝しかありません」と思いを伝えられた。運や縁を感じながら、サッカーの素晴らしさを再認識した。これだからやめられない。【佐藤成】