投石器や銃やカタパルト、大陸間弾道ミサイル…兵器と物理学の切っても切れない関係
高校物理でも頻出する斜方投射の問題
ここで斜方投射の教科書的な解説をしておこう。斜方投射とは、「物体をある初速度をもって空中に斜めに投げ出したときの、物体の運動」のことをいう。 空気抵抗が小さくて無視できる場合、斜方投射された物体の軌跡は放物線を描く。この斜方投射は、ガリレオが「ピサの斜塔」の実験で行った、持っていた球をただ落とすだけの「自由落下運動」のバリエーションと説明したら驚くだろうか。 ガリレオは、「初速」をつけずに、持っていた球を離して、下に落としたが、斜方投射はこれに「初速」が加わっただけにすぎない。 空中に放出した後に、働くのは「重力」のみで、空気抵抗さえ無視すれば、斜方投射で放出された石の軌跡は「重力」の変数として記述できる。たとえどのような初速をつけたとしても、放出後には重力以外の力は物体に働かないので、斜方投射も自由落下運動の一種と説明できる。 斜方投射の本質は、水平方向は等速度運動なのに対して、鉛直方向は下方向きの等加速度運動であるということだ。等加速度運動とは、一定の加速度で進む運動のことで、自由落下や斜面に球を転がしたときの運動がその典型例だ。 斜方投射の特質として、鉛直方向の運動と水平方向の運動が独立している。 これを問う、以下のような問題を考えよう。 同じ高さにある2つの質点AとBを考える。AもBも重力加速度で自由落下するがBだけは水平方向にAに向かって初速を与えるとする。AとBが落下途中でぶつかるためのBに与える初速の大きさは? (水平方向に打ち出すのも斜方投射の一種だということに注意) この問題は一見、難しそうに見える。だが、答えはなんと「どんな初速でも必ずぶつかる」である。なぜか? まず、AとBは落下している間ずっと同じ高さだということに気を付けよう。Bは水平方向には初速が与えられているが、鉛直方向には初速を与えられていないので、鉛直方向の運動はAとBでまったく同じだからだ。ずっと同じ高さを維持するなら、水平方向でBがAと同じ位置に来たとき、Aはそこにいるのだから、必ずぶつかる! この問題は一般化できて、AとBが同じ高さにいないときも同じことがいえる。Bに与える初速をAの方向にしておくだけでよい(大きさはまったく関係ない)。Bが水平方向でAと同じ位置に来たとき、Aはそこにいるはずである。なぜなら、重力による落下距離はAもBも同じで、全体が鉛直方向に下方に平行移動しているだけなので、AとBの相対的な位置関係は、重力があろうが無かろうがまったく関係ないからだ。 この原理はモンキーハンティングという実験でも証明できる。 モンキーハンティングとは、銃声が鳴ると同時にサルが木から落ちた場合、銃口がサルのほうを向いていれば必ず弾丸は命中するという物理現象である。高校物理ではモンキーハンティングの実験を行っているところもあるので、実際に体験された方もいるかもしれない。