飯島栄治八段の解説 伊藤新叡王が誕生、将棋界の新しい歴史の一歩 藤井七冠は同学年棋士の躍進が発奮材料に
将棋の藤井聡太叡王(21)=8冠=が20日、甲府市の常磐ホテルで指された第9期叡王戦五番勝負第5局で後手の伊藤匠七段(21)に156手で敗れ、対戦成績2勝3敗で初めてタイトルを失った。昨年10月11日に史上初の全8冠を独占したが、8冠時代は254日でストップ。7冠に後退した。「すごくないですか」のフレーズで知られる飯島栄治八段(44)が解説した。 見ごたえがあり、最終局にふさわしい名局だった。絶対王者を破ったのは同学年の棋士という将棋界の新しい歴史の一歩、すごくないですか。 藤井七冠がさえなかったわけではない。得意の先手角換わりで序盤は時間を使わず、深く研究していた。中盤入り口の▲6六銀直は守りの銀を歩の頭に進めて攻めを優先した手。優位に立ったが、伊藤新叡王の△7六歩にバランスを崩された。終盤▲6四桂は藤井七冠らしからぬ敗着。伊藤新叡王の勝負手△7六歩が効いていた。 年単位で続くと予想された藤井七冠の全8冠時代は意外に早く幕を閉じた。最近は若手棋士の実力が拮抗し、一人勝ちが長く続くのは難しい。その中でも8冠をここまで維持したのは、相当踏ん張っていたと思う。 伊藤新叡王は藤井七冠を後手番で2回も破ったのも、すごくないですか。タイトル保持者になったことで予選はシードとなり、タイトル挑戦のチャンスは広がる。依然7冠を保持する藤井七冠にとって、同世代の躍進は発奮材料。両者のタイトル戦は今後、長く続くだろう。