冷蔵室を丸ごとチルド化しちゃった! 日立の冷蔵庫に見る驚きの技術力(多賀一晃/生活家電.com)
【家電のことはオイラに聞いて!】#52 「チルド」という言葉をご存じでしょうか? 「冷却した」という意味で、日本産業規格(JIS)では、約0度と定められています。多くの人は0度は水が凍る温度と認識しているでしょう。確かに水だけなら凍り始めますが、食材に含まれる水分には、いろいろなモノが混じっています。そのため実際の凝固点はもっと低く、マイナス3度で「パーシャル」(一部が凍る)という凍る寸前の状態になります。 【写真】ハイアール乾燥機FUWATOの実力 「ボタン1つで衣類ケア」を考え抜いたモデル この0度近辺からマイナス2度から3度は食材保存に大きな影響を与えます。温度が高ければ食材は早く傷む。凍れば食材の水分が膨張して、動物なら細胞膜、植物なら細胞壁を破ります。肉や魚はドリップ(肉汁)が出るし、野菜だとシャキシャキ感がなくなります。正確な温度維持は、とても重要な技術なのです。 冷蔵庫でチルド技術が使われているのは当然、チルド室。冷蔵室最下部の隔離部屋です。一般的に冷蔵庫の冷蔵室は4度から8度ほどです。 ちなみに冷蔵室内は温度ムラがかなりあります。特にドアポケット部分は開けるたびに冷気が逃げます。ここに缶ビールを置いてはいけません。日本のビールは4度程度がおいしいので缶ビールはできる限り庫内の奥に置くのが鉄則です。 チルド室が冷蔵室最下にあるのは、真下にある冷凍庫の冷気を使うためです。さらに隔離部屋なので、温度以外にもいろいろな挑戦がされてきました。 ユニークなのは日立の「真空」チルド。「真空」と言っても気圧ゼロではありません。JISの定義では「真空」とは「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態」。鮮度劣化は酸化が原因。そこで「真空」チルドは、少し空気を抜いてやって酸素分子の数を減らす技術です。 ■開ける時の「プシュー」がかっこいい! 日立の場合は0.8気圧。このチルド室の扉を開ける時が実にかっこいい。「プシュー」と、ガンダムのコックピットが開くような音がする。冷蔵庫が頑張って働いていると感じます。私の「推し音」です。が、これ以上圧力を下げると構造変更が必要になるので、この技術はこれが限界です。 日立はさらに、チルド室をマイナス1度(特鮮氷温ルーム)、冷蔵室内を2度へとチルド化しまました。断熱技術のレベルが上がり、冷蔵室全体を2度にしても電気代が変わらなくなったからです。肉や魚を冷蔵室のどこに置いてもそれなりに鮮度を保てるのです。 加湿もするようになりました。これも冷蔵庫自体の密閉度が高くなったため。日立の冷蔵室は「低温高湿」なのです。食材が乾かないので、においが気になる食品だけラップをすればよく、冷蔵室でとりあえずの用が済みます。これが「まるごとチルド」です。 ラップ不要、食材ロス減はSDGsにもかないます。加えてドアポケ以外なら、どの位置でもビールがウマい! 冷蔵室=チルド化は、とても有益な技術なのです。 (多賀一晃/生活家電.com主宰)