厚生労働省「人口の3割以上がメタボ」…高すぎる肥満度のウラには厚労省の驚くべき「思惑」
毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。 『健診結果の読み方』連載第3回 『職場検診で「本当の身長」は測れない…正しい結果を出せないワケは、老化が引き起こす「意外な病気」にあった』より続く
太り具合を表す値
太っているか、痩せているかは、身長と体重のバランスで決まります。しかし主観的に決めるわけにはいかないので、指標となる数字が作られました。 それがBMI(Body Mass Index:体格指数)です。体重(kg)を、身長(m)の2乗で割った値として定義されています。 BMI = 体重(kg)÷(身長(m)の2乗) 単位は「kg/㎡」ですが、それ自体に意味はありません。肝心なのは数字だけです。 この式は、19世紀のベルギーの科学者が提唱したものですが、なぜ身長の2乗で割ったのか、理由はよく分かっていません。 しかし単純だし、身長によらず太り具合をうまく表しているし、比較しやすいからという理由で、いまでは肥満度を表す指標として、世界中で使われています。 職場健診の基準も同様です。ただし厚生労働省は、40歳以上のBMIについて、22.0を理想的な数値としています。また25.0以上が「メタボ」と呼ばれるようになりました。
おかしな基準値
東京都におけるBMIの平均値と分布を見ると、男女とも全年代で普通体重の範囲に入っています。 とくに女性の平均値は22前後と、厚生労働省の目指す数値をほぼクリアしています。男性の平均値は、60代までは24を超えており、50代前半で、中年太りの影響でしょうか、最大になります。そして70代に入ると24を下回ってきます。 しかし分布を見ると、必ずしも厚生労働省の思惑通りになっていないことが分かります。 「20.0以上25.0未満」と「18.5以上20.0未満」のひとが普通体重で、それ以上なら「メタボ」というレッテルが貼られるわけです。ところが男性では全年齢で3割以上、とくに50代では4割近くがメタボに属しているのです。 「肥満(1度)」(25.0以上30.0未満)だけ見ても、40代こそ若干少ないものの、50代以上では3割に達しています。ちなみにこの層は「チョイメタボ」とも呼ばれています。 さすがに「肥満(2度)」以上は太り過ぎという印象がありますが、チョイメタボなら、まあ普通と思っていいでしょう。 人口の3割以上をメタボとしてしまう基準値のほうが、むしろ変なのかもしれません。そもそも国民全員を、スーパーで売られている野菜よろしく、太さを揃えようとすること自体、無理な相談です。 女性では、チョイメタボ以上の割合はかなり低くなっており、その点ではうまくいっているように見えます。 しかし18.5未満の「低体重」が10パーセント以上を占めています。低体重のひとは、つねに栄養不足気味です。若いうちはまだいいのですが、高齢になると筋肉や骨が質量ともに衰えてしまいます。