「これだからAB型は…」血液型を責める“ブラハラ”A型夫にうんざり 「もう離婚したい…」
「これだからAB型は嫌なんだよ」。こんな夫からの血液型を責めるような言葉が辛くて離婚を考えているという女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。 【動画】育児放棄するモラ夫 女性は、血液型の話になると「AB型ってアレだよね~」などいい反応をされたことがなく、小さい頃から「辛い思いをしてきた」として、成人してからは「O型」と伝えるようにしていました。 A型の夫は知り合った頃から血液型を気にするタイプで、女性が交際前に聞かれた時に何気なく「O型」と伝えて以降、血液型の話題を避けていました。しかし、結婚して子どもが生まれて血液型の話になった時に、実は「AB型」であることを伝えました。 夫はその場で嫌そうな反応をしただけでしたが、その後夫婦でケンカするたびに血液型のことをなじられるように。努力で変えられるものでもなく、夫から言われ続けることに我慢できなくなり、「離婚」の2文字が浮かぶようになったようです。 血液型を理由とした嫌がらせや差別的言動は「ブラハラ(ブラッドタイプ・ハラスメント)」と言われることもありますが、特定の血液型であることやそれに関連する嫌がらせを理由に離婚することはできるのでしょうか。山本明生弁護士に聞きました。 ●ブラハラが「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうか ──「ブラハラ」を理由に離婚することは可能でしょうか。 夫婦の話し合いに基づく協議離婚や調停離婚は認められますので、当事者間で納得の上でブラハラを理由に離婚をすることは可能です。 夫婦間で話し合いがまとまらず訴訟に至った場合、法定の離婚事由が存在すれば離婚が可能です。法定の離婚事由は次の5つです。 (1)相手の不貞 (2)相手からの悪意の遺棄 (3)相手の生死が3年以上不明 (4)相手が強度の精神病で回復の見込みがない (5)その他婚姻を継続し難い重大な事由 ──ブラハラの場合はどれに当たり得るのでしょうか。 いわゆる「ブラハラ」は(1)~(4)には該当しないので、(5)に該当するかどうか、換言すれば、婚姻関係の破綻が認められるか否かが問題となります。 ●「おまえの血液型が受け入れがたい」は原則通用しないが… ──ブラハラを受けた側から離婚を求めた場合はどうでしょうか。 今回のケースにおける具体的な事情は明確ではありませんが、嫌がらせや差別的言動の態様やその程度、被害者が受けた精神的苦痛の有無やその程度、ブラハラにより夫婦間にどのような影響があったのか等を総合的に考慮し、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」といえる場合には、離婚が認められることになると思われます。 ──ブラハラをした側から、たとえば「おまえの血液型が受け入れがたい」などという理由で離婚を求めてきた場合はどうでしょうか。 そもそも「ブラハラ」の前提となる血液型と性格を関連付ける考え方は科学的根拠が希薄であるとも言われており、一説によれば単なる少数派に対する不当な評価という考え方もあります。 仮に「血液型を受け入れがたい」と主張したとしても、離婚事由を検討する上で必ずしも合理的な主張であるとはいえないと思われ、このような主張のみでは、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とは判断されない可能性が高いのではないでしょうか。 もっとも、夫の血液型を気にする程度が、たとえば、宗教上の理由により絶対にAB型の女性とは結婚出来ないこととなっており、それを結婚前に女性にも告げていたというように自己のアイデンティティーを形成する上で極めて重要といえるような場合であれば、女性が血液型を偽り結婚したことが不法行為となる可能性もあると考えられます。 その場合、血液型について嘘をついていた事実が発覚し、そのことが夫婦関係に影響を与え、これまでの夫婦関係が一変したというような事情等があれば、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断される可能性もゼロではありません。 とはいえ、本件において女性は交際前に何気なく回答したに過ぎず、夫も血液型を気にするタイプではあったものの、知った時に嫌そうな反応をしたにとどまる程度であれば、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とまでは判断されないと思われます。 「ブラハラ」もいわゆるハラスメントであり、そのハラスメントの存在を前提に、当該夫婦の婚姻関係が破綻しているかどうかについて、あらゆる事情を総合考慮して判断していくということになるでしょう。 【取材協力弁護士】 山本 明生(やまもと・あきお)弁護士 大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。 事務所名:山本明生法律事務所 事務所URL:https://akioyamamoto-law-office.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部