『モンハンNow』1周年インタビュー。星10の先はどうなるのか? 強さのインフレじゃないハンターのつながりが楽しくなる機能も計画中
2024年9月14日で1周年を迎えた『モンスターハンターNow』(モンハンNow)。10月12日、13日には東京・渋谷で初の大型リアルイベント“モンスターハンターNowカーニバル 2024:渋谷”が開催された。 【記事の画像(10枚)を見る】 会場にて、『モンハンNow』のゲームディレクター・菅野千尋氏とプロデューサー・麥谷結衣氏にインタビューを実施。1周年を迎えた感想や今後の展開などを伺った。 菅野千尋(カンノチヒロ): 写真左。『モンスターハンターNow』ゲームディレクター。ソニー・インタラクティブエンタテインメントのジャパンスタジオにて『人喰いの大鷲トリコ』のレベルデザインとフィジックスを担当。Niantic入社後は『Pikmin Bloom』の開発に携わる。 麥谷結衣(ムギタニユイ): 写真右。『モンスターハンターNow』リリース前からプロダクトマネージャーとしてチームに携わり、2024年からプロデューサー。 1年間で44回アップデート、チームのスピード感がスゴい ――まずは『モンハンNow』1周年おめでとうございます。1周年を迎えた率直な気持ちをお聞かせください。: 菅野: あっという間の1年だったなと思います。運営型のモバイルゲームなので、ローンチして終わりではないのが当たり前ではありますけど、じつはリリースから9月までの1年間で約2週間に1回、合計44回のアップデートを行っているんですよね。細かいものも含めれば、もっとたくさんありますが(笑)。 作ったものに対して喜んでいただくこともすごく多いですし、もっとこうしてほしいっていうフィードバックをたくさんいただけること自体が、すごくありがたいなと思っています。この1年、本当に感謝しかありません。 麥谷: いろいろなものをアップデートで追加してきましたが、じつはリリース当初からやりたいって思っていることは全然実現できてないんですよね。なので、1周年ではあるんですけど、まだまだこれからっていう気持ちです。 ――40回もアップデートしているのはかなりの頻度かと思いますが、どのようなスケジュールで実施していますか? 菅野: 私たちのチームはそれほど人数が多くはありません。しかし、その分、やりたいことに対して迅速に実行し、まずは動くものを制作できます。機能の改善に関しては計画を立てることに多くの時間をかけるのではなく、毎日ビルドを作り、自分たちでテストを行いながらリリースに向かうかたちで進めています。 麥谷: 少人数だからこそ、ユーザーの意見を素早くキャッチアップできる点が大きいです。たとえば、大連続狩猟ではリリース後に上がった不満をカスタマーサポートがすぐに報告し、その意見を開発チームで迅速に議論します。そこから、「これは改善しよう」と即座に決定し、動き出すスピードが非常に速いのが特徴です。 ――問題点をそのまま修正するのではなく、漂流石のような新しい機能を導入することで狩りの幅が広がるアップデートも展開してきた印象があります。 菅野: ユーザーの皆さんからすると、もどかしい部分もあると思います。ご指摘の通り、直してほしいという要望にそのまま応えることが解決策のひとつではありますが、長い目で楽しんでいただくためには、ハンターのみなさまからいただいたすべてのフィードバックに従って直すことが必ずしもプラスになるとは限りません。そうした点には配慮しています。 そのため、少しお待たせすることもありますが、できるだけ理想に近い形での修正や、将来的に予定している新しい遊びを通じて解決することをつねに話し合っています。 漂流石は防具にスキルを追加できる機能。スキルを付けるには5キロ歩かないといけないので健康にもいい機能だ。 星11以降の導入予定は? 強さのインフレだけにならないヨコの広がり ――現状ではモンスターの強さが最高で星10、武器もグレード10が上限です。その先の計画はあります?: 菅野: そこからさらに上の段階、たとえば単純に星を11、12と増やしていくのか、これまでの 『モンハン』シリーズのように上位の新しい世界を作るのか、いろいろなアプローチが考えられます。上の世界についてはつねに考えており、将来的に導入するつもりでデザインしています。しかし、いまは星10のモンスターをどのように扱っていくかをしっかり考える必要があると思っています。 トップレベルでやり込んでいる方々は確かにいらっしゃいますが、一方で「今日始めました」というユーザーもいる中で、そのバランスをうまく取ることがすごく重要な課題だと考えています。 ――『モンハンNow』はアプリゲームなので長期的にプレイするとなると、武器を最大強化したり、最大強化した武器を増やしたりといったコアなやり込みが辛いと感じるハンターもいると思います。こちらについてはどのようにお考えですか? 菅野: 5年、10年、できれば一生サービスを続けたいと考えています。やり込める要素を作ることは大切ですが、一方でそういった要素に興味がないハンターがほかのゲームに移ってしまうのはもったいないじゃないですか。 なので、自分の武器を強化することをタテ軸、そこにヨコの広がりを持たせるようなコンテンツを提供していきたいと思っています。リアルイベントで集まった人たちを見ていると、人といっしょに遊んだり、何かを共有する楽しさがすごく大事なポイントだと感じます。みんなで協力して楽しむコンテンツや、異なるタイプのエンドコンテンツを増やしていきたいです。 また、『モンハン』は狩りだけでなく、オトモやハンターライフといった狩猟以外の楽しみかたもありますので、そのあたりの要素も取り入れていきたいです。 麥谷: シーズン3で実装された肉焼きも、ハンターライフを楽しむひとつの要素ですね。ほかにも、強さとは別のヨコの広がりとして、重ね着のシステムも取り入れています。 『モンハンNow』では“現実世界でのモンハン体験”をコンセプトに、ふだん私たちが着ているような服装も衣装として反映しています。こうしたお洒落の要素やハンターのカスタマイズ、さらに狩人メダルなどの装飾要素を増やし、仲間とコミュニケーションを取る際に活用できるアイテムを充実させていきたいと思っています。 10月に実装されたスタンプ機能(左)。シーズン3で実装された肉焼き(右)。いっしょにプレイしたハンター名がプライバシー保護で“Hunter”と表示される機能を配信者用に搭載するなど、細かくて便利なアプデが多い。 ――まだ言えない部分もあるかと思いますが、いろいろと計画されているのですね。とても楽しみです。: 菅野: 1年前にローンチした時点の 『モンハンNow』とアップデートが重ねられたいまでは、かなり異なるゲームになっていますよね。まったく違うゲームを作りたいわけではありませんが、基本的なゲーム体験のおもしろさを広げながら、より新しい体験へと進化させていきたい。位置情報ゲームとしての『モンハン』をという枠組みを超えた、大きなコンテンツにしたいですね。 強いのは遠距離武器だけじゃない、いろいろな武器の楽しさを発見して ――先日公開された1周年振り返り動画では、HR100以上のハンター使用武器ランキングでは弓やボウガンなどの遠距離武器が多く含まれており、遠距離武器がかなり人気を集めているようです。その現状についてはどう考えていますか?: 菅野: さまざまな武器をバランスよく使ってもらいたいと思っています。私はハンマー使いなので、ハンマーを使う人がもっと増えてほしいとも思っていますが、 『モンハン』は武器ごとにそれぞれ違った楽しさがありますよね。同じ武器ばかり使って飽きてしまったときに、ほかの武器を使うことで別のゲームかのような新鮮さを味わえるのが大きな魅力です。 なので、今後はさまざまな武器の使用を促進するために新しいスキルを導入し、特定の武器と組み合わせることでおもしろくなるような仕組みを考えています。あまり人気のない武器種も、じつはかなり強力だったりするんです。 たとえば、“黒ディア弓”として親しまれている“角王弓ゲイルホーン”はコストが高く、オールマイティに使いやすい武器です。一方で、ダメージ効率の面で見るとほかの武器が秀でていることも。そういった武器に注目してもらえるような施策を計画しています。決して強い武器を弱体化させたいわけではなく、むしろふだんご利用いただいていない武器の長所などをもっと知っていただき、いろいろな武器を使う方向に誘導できるように工夫していきたいです。 ――X(Twitter)に投稿されているさまざまなハンターの動画を見ると、いろいろなコンボや立ち回りが見れて「こんな使い方があるんだ」と驚くこともあります。そうした発見がもっと増えると、さらに楽しさが広がりますね。: 麥谷: 正攻法の動きが流行りがちですが、ゲーム内ではさまざまな武器種を作れるようになっているんですよね。ただ、プレイヤーの皆さんにはこだわりがあるので、あまり使われない武器種も多いのが現状です。今後は、ゲーム内でいろいろな武器種を試してみたくなるコンテンツを追加していきたいと考えています。 そのためには、機能面や見せかた、さらにはゲーム内のガイドを強化し、「この武器でこんな遊びかたができる」といった情報をしっかりとアピールしていきたい。各武器種にはそれぞれの楽しみかたがあるので、ぜひ体験してもらいたいですね。 ――すごく細かいことですが、睡眠属性についての質問です。眠った状態のモンスターに攻撃すると起きられてしまうのでマルチプレイだと連携が取りづらいです。それに対する対策は考えているのでしょうか? 菅野: 睡眠属性についてはピンポイントで対策を考えているわけではありません。その問題はある種 『モンハン』の特色なのではないかと思っています。ほかのマルチプレイゲームでも同様に、コミュニケーションが取れる仲間とプレイする場合に適した武器がある一方、野良で遊ぶ際には違う武器のほうがいいことも。ただ、野良プレイでの使いづらさについては何らかの対策を考えていきたいですね。 麥谷: 『モンハンNow』では過去に武器の機能調整を行ったことがありますが、今後もトレンドを見ながら調整を進めていく可能性はあります。ただし、これはナーフ(弱体化)を示唆するものではありません。最初は「これ、あまり強くないのでは?」と思われていた武器が、スキルの組み合わせや特定のモンスターとの相性によって、遊びかたが大きく変わることがあるからです。また、マルチで遊ぶ際には、その武器が持つ有用性が際立つこともあるため、そうした観点から遊びの幅を広げていくことを考えています。 ――現状、フレンドどうしが離れた場所にいるといっしょに狩猟できないですが、今後そのような機能を実装する予定はありますか? 菅野: 前提としてフレンド機能についてお話しますと、いっしょに遊んだりする機会を増やしていきたいと思っています。ソーシャルな要素を強化したりコミュニケーションを取ったりなどのかたちで。 フレンド間でできることを増やすことも考えていますが、必ずしも遠くにいる人どうしでいっしょに狩りをすることだけが解決策ではないと考えています。もちろん、ペイントボールを共有したいという意見も理解していますが、まずは身近にいる友だちどうしでできることを増やすことが重要だと思います。 麥谷: 位置情報ゲームなので、ローカルで集まってみんなで顔を合わせて狩りを楽しんでほしいです。Nianticとしては、人々を外に連れ出すことをミッションのひとつとして考えているため、その点も考慮しています。 菅野: 実際に、こうやってリアルイベントのように1000人、2000人と多くの方が集まって遊ぶということは、すごく特別なものだと思うので、そのような体験をさらに広げていきたいと考えています。 麥谷: いつでもネットでつながれる時代ですが、そうした中でもリアルなつながりを大切にしています。 大型リアルイベント“モンスターハンターNowカーニバル 2024:渋谷”の模様。2日間で20000人が参加した。 香港・台湾のハンターはアツい! ――海外では本作はどのように盛り上がっていますか? 何か印象に残ったエピソードや事例があれば教えていただきたいです。: 菅野: 日本のハンターの熱量もすごく高いのですが、香港や台湾の方々それに負けていません。 麥谷: 香港や台湾でのコミュニティイベントに集まってくださった皆さんは、ハンターランク200や300といった高いランクの方々ばかりでびっくりしました。人が集まりやすい環境なので街中では“一狩りいこうぜ!”がたくさん飛んでいました。もともと 『モンハン』の熱が高い地域ではあったと思いますが。 菅野: とくに熱量を感じたのは香港ですね。国土が狭いため、高層ビルが多いという特徴があって。GPSは平面でしかユーザーを捉えないので、ゲーム上では多くのユーザーが1ヵ所に密集している感じになります。 左から香港、台湾のコミュニティイベントの模様。 麥谷: また、今年の夏はとくにアメリカを中心に、海外での拡大を意識して取り組んできました。特定のモンスターが世界中のハンターといっしょに狩りができる“次元リンク機能”という機能も実装しました。アメリカ限定の機能というわけではありませんが、広い国土に対して人口密度が低いため、マッチングが難しいという意見が多く寄せられていたので、それらを課題を解決するためのものです。 また、夏にはMrBeastといったインフルエンサーとのコラボレーションも行い、その影響でアメリカでのプレイヤー数が大きく増加しました。今後もほかの地域での盛り上がりをさらに推進していきたいです。 登録者3億人越えのYouTuberのMrBeastとのコラボイベントを実施。特別な片手剣“MrBeastソード”や重ね着などが展開された。 ――最後にハンターの皆さんへメッセージをお願いします。: 麥谷: いつも 『モンハンNow』を遊んでいただき、ありがとうございます。皆さんからの多くの反響は、開発チームでしっかりと目を通しています。今後も、私たちが進めたい方向性と皆さんの意見や要望を組み合わせて、コンテンツをさらに大きくしていきたいと考えています。これからも引き続き、遊んでいただけるとうれしいです。 菅野: ハンターの皆さん、たくさん遊んでいただきありがとうございます。この1年、私たちは狩猟を中心とした機能の新規追加や拡張に力を入れてきました。それがこのゲームの基盤となる部分なので、これからもその軸を維持しつつ、新しいモンスターや狩猟の楽しみかたを提供していくつもりです。 さらに、コミュニティやフレンドとの関わりを深め、みんなで遊ぶことで体験が大きく変わるような広がりも目指しています。また、ハンターライフという概念をもとに、狩猟をもっと大きな視点で捉え、遊びかたに変化をもたらす新機能にも来年はチャレンジしていきたいと考えています。狩猟が大好きな方も、狩り以外に『モンハン』の魅力を感じている方にも『モンハンNow』ならではの楽しみを提供していきますので、ぜひご期待ください。