旅情を誘い時代を映して100年 JTB時刻表の伝説の表紙「アメをなめる女の子」は誰?
来春、創刊100年を迎える「JTB時刻表」(JTBパブリッシング)は毎月、表紙にどんな写真を使っているか見るのが楽しみだ。巻頭のカラーページで開業60周年を迎えた東海道新幹線を特集している10月号は表紙が2種類ある。 【画像】新幹線「100系」の現役時代の写真が使われたJTB時刻表10月号特別版の表紙 2階建て車両が特徴だった新幹線「100系」のクラフト模型の付録がついた特別版と通常版の2種類が同時発売されたためで、特別版の表紙は100系の現役時代の写真。通常版はさっそうと走る最新の「N700S」。北陸新幹線敦賀延伸に伴うダイヤ改正を掲載した今年の3月号も付録付きと通常版で違った表紙だったが、車両はいずれも「E7系(W7系)」。同じ月で表紙の車両が異なるのはJTB時刻表99年の歴史で今回が初めてという。 表紙のデザインを決めるのは編集長判断だ。100系採用の理由について、編集長の梶原美礼さんは「時刻表の読者には、現役車両より往年の車両の方が当時をしのんでいただけるのではと考えた」とした上で「創刊100年を目前にしている編集部としては『100』つながりの100系がやはりいいと、採用に踏み切った」と説明する。100系は「0系」に続く2代目新幹線電車として昭和60年に登場。JR東海のテレビCM「シンデレラ・エクスプレス」などにも登場し、新幹線のイメージアップに寄与。「(サメの鼻のようにとがった)『シャークノーズ』と呼ばれたシュッとしたスタイル」(梶原編集長)が人気を集めた。 JTB時刻表の歴史の中で過去、最も売れたのは「国鉄監修 交通公社の時刻表1986年11月号」。国鉄最後のダイヤ改正を掲載しているが、「国鉄最後の時刻表」という誤った情報が一部で流れ、203万部も売れた。表紙は前年に走り始めた100系。東京駅を出発する写真が使われた。 「伝説」となっている表紙もある。「1978年10月号」は駅のホームでアメをなめている女の子の写真が使われた。風景の中を走る列車の写真が基本だった当時、異例だったが、反響は大きかった。元編集長の木村嘉男さんによると、この写真はカメラマンが上野駅で偶然撮影したもので、翌月号から2号連続で「謝礼を差し上げます」と誌上で呼びかけたが、名乗り出る人はいなかったという。 「1987年3月号」は国鉄の民営化に伴う、最後の国鉄監修だった。そして「1987年4月号」の表紙に「国鉄」の文字はない。写真は両方の号とも100系で、その存在感は絶大だ。東海道新幹線開業のダイヤを掲載した「1964年10月号」から翌年の9月号まで1年間、表紙は全号が新幹線だった。日本万国博覧会が開催された昭和45年は3月号から8月号まで、会場の風景が表紙となった。時刻表の表紙は人々を旅に誘うだけでなく、その時代を映し出すものでもある。(鮫島敬三)