パンク愛から生まれた「遊園地みたいな」DIY音楽フェス・Riot Fest【シカゴ音楽旅行記Vol.2】
「Riot Fest」はパンクの一大テーマパーク
そのなかで今回はRiot Festに参加することに。遡ること2005年、「シカゴで大好きなパンクロックのイベントを開催する」というシンプルな動機からスタート。回を重ねるごとに規模感を拡大し、現在では全米最大級のインディーフェスとなった。 オルタナ、メタル、ヒップホップなど「パンク」を拡大解釈したラインナップも魅力的で、2024年は地元の英雄フォール・アウト・ボーイ、同じ時代を生きた戦友のベック&ペイヴメント、2019年の解散後初ライブとなるスレイヤーがヘッドライナーを務め、解散直前だったNOFXが彼らの名を冠したステージ「NOFX World」に3日間とも登場。公式発表によると1日あたり5万人のオーディエンスが訪れた。 フェス2日目、9月21日の土曜日正午すぎ。ループエリアから車で15分ほど離れた会場のDouglass Park付近は、バンドTシャツに身を包んだ人で溢れかえっていた。モヒカンやパンクファッションのガチ勢も多かったが、ナードな音楽ファンやシニア/ファミリー層もいたり客層は幅広い。最高気温は30度近く、夏フェス並みの暑さだ。 Riot Festは一大テーマパークでもある。観覧車などの乗り物やアーケードゲーム、スケートボードのハーフパイプ、レスリングのリングコート(米プロレス連盟NWAとのコラボ)、歴史資料館、サーカス、ウェディングチャペル(約40組のカップルが挙式を挙げたらしい)、我々世代には懐かしいドラマ『フルハウス』のジェシー役、ジョン・ステイモスのバター像(劇中に登場するバンド、ジェシー&ザ・リッパーズの再結成&出演を祈願したもの)まで、遊び心に富んだアトラクションがてんこ盛りだ。
5つのステージで繰り広げられた名演
ステージは全部で5つ。メインの「Cabaret Metro」と「AAA」、その手前にあるサブの「Rise」と「Radical」はそれぞれ隣接しており、片方が終わると転換時間ゼロでもう一方が始まるという斬新な仕組み。5分も歩けばメイン~サブを行き来できるし、この配置でステージの音が被らないのも目からウロコだ。 シカゴ出身アクトを積極的に起用するなど地域密着型のフェスでもあり、最大ステージ「Cabaret Metro」はライブハウスMetroに由来(本連載Vol.1参照)。「NOFX World」では偉大なバンドの功績を称え、Riot Festの初心に立ち返るように新旧のパンクバンドが集結し、この日はNOFXの先輩にあたるディセンデンツも出演した。 個人的に楽しみで、Tシャツまで着ていったのはバズコックス。ピート・シェリーは2018年に亡くなり、歌うのはギターのスティーヴ・ディグルだが、バンドの演奏は今も瑞々しく、大名曲「Ever Fallen in Love」では弾けるように盛り上がった。実験的ハードコア集団のThe Armed、カントリー調の最新アルバム『Tigers Blood』で飛躍したWaxahatcheeなど、来日未経験の今観ておきたいアーティストを堪能できたのも嬉しい。 2008年のフジロック以来に目撃したスプーンは、音の隙間でドライブさせる極上のロックンロールバンドだと改めて実感。新年早々にrockin’on sonicで来日するセイント・ヴィンセントは、シアトリカルなパフォーマンスに磨きがかかり、デヴィッド・ボウイとデイヴィッド・バーンの遺産を継承しようという野心を感じた。そしてベックは、「Devils Haircut」のギターリフから始まり、バンド編成でヒット曲を連発する鉄板のステージング。演奏や映像演出もしっかりアップデートされており圧巻の一言だった。