『アンメット』が特別なドラマとなっている理由 “繋がり”を可視化していくリアリティ
『アンメット』が医療ドラマとして異色である最も大きな点
本作が医療ドラマとして異色である最も大きな点は、働く人々のリアリティである。例えば第4話における三瓶(若葉竜也)と綾野(岡山天音)の攻防。ミヤビに好意を抱く、専門分野が異なる2人の天才医師が、ミヤビの担当する患者・加瀬(前原瑞樹)を巡って対立するかと思いきや、加瀬が選んだカテーテルの専門医である綾野によって手術はすんなりと成功し、三瓶はその手さばきの見事さをモニター越しに見つめていた。 同じく第4話における三瓶と大迫(井浦新)の対立もそうだ。2人が、自身の経験に裏打ちされたそれぞれの信念を持って患者を見ているからこそ生まれた治療方針を巡る対立と、いざという時の共闘。一人の突出した才能を持つスーパードクターに誰もが従うといった、医療ドラマの形式に捉われず、それぞれの分野のプロフェッショナルである医師や看護師たちが切磋琢磨して働いているからこそ生まれる光景は、観ていて清々しい。仕事ぶりだけでなく、勤務中は厳しい津幡(吉瀬美智子)が意外な一面を見せる料亭居酒屋「たかみ」での飲み会の風景もまた、それぞれの能力を認め合う理想的な職場としての素晴らしさとも言え、働く人々を描いたドラマとしても優れていると言える。 ドラマ『アンメット』は「繋ぐ」ドラマだ。患者と医師・看護師を。物語と私たち視聴者を。第1話において失語症を抱える俳優・赤嶺レナ(中村映里子)主観による視覚や聴覚が可視化された時、彼女が見ている世界と、私たちが見ている世界が、ほんの僅かに繋がったような気がした。そして、レナと主人公・ミヤビの葛藤が重ねて描かれることによって、レナの印象的な台詞「私たちはやれる。変身」は、彼女だけの言葉ではなく、彼女とミヤビの「私たちの言葉」となった。 第2話のサッカー少年・亮介(島村龍乃介)とミヤビは、ぬかるみだらけの空き地でキャッチボールをする。亮介だけでなく、ミヤビもまた、泥だらけになって笑う。さらに第3話において、医師と看護師たちが、全員で突進し、文字通り一丸となって扉を壊す場面を描くことで、本作は、彼ら彼女らがより強固な信頼関係で繋がった瞬間を可視化した。1つ1つ赤い糸で縫い綴じるように、人々の絆を丁寧に繋げ、紡いできた本作。しかし、ミヤビとミヤビの家族にとって神様のような存在である大迫の真意がいよいよ分からなくなってきた。ミヤビと、ミヤビを思う人々の心の揺れから、ますます目が離せない。 参照 ※ https://www.ktv.jp/unmet/productionteamsdiary/01/
藤原奈緒