施設に預けるのは残酷なこと? 家族が認知症になったらすべきこと【長生きでも脳が老けない人の習慣】
夜中に食べ物を物色し始めたら、やめさせるべき?
認知症のBPSD の症状のひとつに、夜に食べ物を物色するという行動があります。 健常な人からみると、異常に映る光景だと思います。夜な夜な起きだして、台所の棚や冷蔵庫を物色する。そんなシーンに初めて遭遇したときは、大切な人が変わってしまった現実を目の当たりにして悲しい気持ちになることもあるでしょう。 そして、何度も繰り返されると、「こんな夜に何やっているの? 夜ごはんは食べたでしょう!」と、つい声を荒げてしまうこともあるかもしれません。 しかし本人に悪いことをしている自覚はありません。それどころか、叱られたことがストレスになって、さらに認知症の症状が進行してしまうことになります。 とはいえ、夜中に勝手に変なものを食べられたりしたら、心配で仕方がありません。夜通し見張って世話をするわけにもいきません。どうすればいいのでしょうか? 夜の物色のための最善策は、すぐに探せるようなところに、カロリーが低い食べ物を置いておくことです。 逆に食べさせないように食べ物を隠したり、手の届かないところにしまったりする人もいるかと思います。しかし認知症の方があちこち探し回るのはそれだけで危険ですし、調味料から何からすべてを隠すのは不可能です。おまけに、食べられないことによるストレスも与えてしまいます。 それならば、体に悪影響が少ないものを、あえて食べられるようにしたほうが、まだ安心です。
施設に預けるのは残酷なこと?
在宅ケアを選ぶか、介護施設へ入居するか……。 身近な人が認知症を発症して介護が必要になったときに悩むテーマです。 在宅ケアと介護施設のいずれにもメリットとデメリットがあり、どちらがいいとか悪いとか簡単に決められることではありません。どちらかに決めたとしても、それで本当によかったのかと、後々悩むことにもなります。 そうならないように、認知機能が衰える前に家族で将来についてきちんと話しておくようにしましょう。 話し合うべきことはたくさんあります。 介護が必要になっても自宅で生活したいのか、誰に付き添ってもらいたいのか、介護施設に入るならどんな施設がいいのか、入居費用はどうするのか……。 介護する側の気持ちも伝えておくべきです。介護に対してどう思っているのか、介護するならどうしようと考えているのか、施設にお願いするならどんなところがいいのか、仕事はどうするのか……。 認知症を発症してしまったら、普通に会話ができなくなる可能性があります。 介護する側もされる側も、思いを伝えられない、伝わらないことになります。そして、どうしたらいいのかわからず途方に暮れてしまう……ということになります。 しかし、本人の意向を前もって聞いておけば、選択を迫られたときに、その結果をもとに最良な方法を導き出すことができるはずです。 元気なときは介護の話題を切り出すのはなかなか難しいかもしれませんが、先送りしてはいけません。話し合う機会をつくり、家族の誰かが決断できるように価値観を共有しておく。それだけで、お互い安心できます。 もちろん、自分が将来もし認知症になったとしたらどのようにしたいのか、家族やまわりの人に伝えておくことも忘れないようにしましょう。 ⻆谷建耀知(かくたにけんいち) 株式会社わかさ生活 代表取締役社長 18歳の時、脳腫瘍の大手術を受け、命と引き換えに視野の半分を失う。自身の経験から、自分のように目で困っている人の役に立ちたいとの想いで、1998年に株式会社わかさ生活を創業。著書に『花鈴のマウンド』や『女子高生と魔法のノート』があり、現在は健康雑誌『若々』も発刊中。
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