「アレック・ソス 部屋についての部屋」展(東京都写真美術館)レポート。なぜ「部屋」なのか?
国際的な写真家集団「マグナム・フォト」の正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした作品で、世界的に高い評価を受けてきたアレック・ソス 。その個展「アレック・ソス 部屋についての部屋」が東京都写真美術館でスタートした。会期は2025年1月19日まで。担当学芸員は伊藤貴弘。 アレック・ソス1969年アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス生まれで、現在も同地を拠点に活動している。これまでに、『Sleeping by the Mississippi』(Steidl、2004)、『Niagara』(Steidl、2006)、『Broken Manual』 (Steidl、2010)、『Songbook』(MACK、2015)、『I Know How Furiously Your Heart is Beating』(MACK、2019年、『A Pound of Pictures』(MACK、2022)など、数多くの作品集を出版。近年は、 ボッテガ・ヴェネタのキャンペーンビジュアルを手がけたことでも話題を集めている。 本展は5年以上の時間をかけて構想されたもの。「部屋」をテーマにソスの作品を6つのセクションで構成する、東京都写真美術館の独自企画だ。同館の自主企画として海外作家個展は7年ぶりとなる。 これまでアメリカ国内を車で旅し、風景や出会った人々を大判カメラで撮影してきたソス。本展出品シリーズのひとつ「I Know How Furiously Your Heart is Beating」はそうしたロードトリップスタイルではなく、舞踏家・振付家のアンナ・ハルプリン(1920~2021)や、小説家のハニヤ・ヤナギハラ(1974~)など世界各地の人々を訪ね、日々を過ごす部屋の中で、ポートレイトや個人的な持ち物を撮影した。部屋とそこに暮らす人をテーマとするこのシリーズが、本展開催のきっかけとなった。 展示は、この「I Know How Furiously Your Heart is Beating」を含む60点で、ソスの30年に及ぶ表現活動をカバーするもの。会場はほぼ同じサイズの6つの「部屋」で構成されている。会場には様々なシリーズが展示されているが、各シリーズはそのすべてが紹介されているわけではなく、本展テーマに合致する作品がセレクトされている。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)