『全領域異常解決室』で“調和”の役割を担う 小日向文世が放つ“何かある”怪しい存在感
小日向文世は『全領域異常解決室』の“裏”の主役?
本作における小日向の立ち位置は、この“調和”を司るものだと思う。興玉や小夢は作品の中心に立って物語をドライブさせるのが役目で、刑事の荒波健吾(ユースケ・サンタマリア)が率いる「ヒルコ専従班」の面々がこれを背後やサイドから煽る。そして物語の外郭の際のところで自由な動きを見せる豊玉が、作品全体に刺激を与える。本作の人物配置に見られる構成は、このようなものではないだろうか。 小日向は物語の展開とみんなの動向に合わせ、宇喜之民生のキャラクターを押したり引いたりし、バランスを取っているように思える。基本的には役柄どおり、一歩引いた位置からみんなを支えるようなポジションだが、ときおり謎めいた言動を取ることで自身のキャラクターを主張し、作品全体を活性化させる。これが本作における小日向の役割なのだ。 物語自体がユニークでスリリングな本作だが、それをベストなかたちで私たち視聴者に提示するためには、俳優/キャラクター同士が有機的に作用し合う的確な人物配置が必要になってくる。もちろん作劇や演出あってこそだが、ここで要求にきっちりと応えてみせる俳優とは、やはり特別な存在なのである。本作の“表”の主役が藤原竜也なら、“裏”の主役は小日向文世だといえるのではないだろうか。
折田侑駿