【コラム】分配よりも成長を選択した米国
5日に行われた米大統領選挙で、トランプ前大統領が大接戦になるという予想を覆して圧勝した。米国の有権者は高い物価と急増した不法移民にまともに対処できなかったバイデン-ハリス政権を審判した。共和党は連邦上下院でも過半数の議席確保に成功し、すでに共和党性向の大法院と共に立法・司法・行政を掌握することになった。トランプ政権2期目の政策が果敢に推進される基盤が完成した。 米国の選挙結果は全世界に広がっている執権勢力審判の延長線といえる。安全保障と経済で米国と緊密につながっている韓国は、トランプ政権2期目との関係で多くの難関にぶつかることが予想される。米大統領選挙の結果は少子高齢化による低成長に苦しむ韓国にも示唆する点が少なくない。 米国人は分配を前に出した民主党でなく、成長を前に出した共和党を選択した。ニューヨークタイムズのコラムニスト、デービッド・ブルックス氏は米大統領選挙の2カ月前の9月4日、「トランプ氏がどう勝利するのか」と題したコラムで、米国人は民主党モデルより共和党モデルを好むと分析した。フロリダ・テキサス・アイダホ・モンタナなど人口が急速に増加する州はほとんど共和党の州知事が在職する半面、ニューヨーク・イリノイ・カリフォルニア・ペンシルベニア・ハワイなど人口が減少または停滞する州は民主党の州知事が受け持っている。共和党の州は低い住居費用と低い税金、経済活力が特徴だが、民主党の州は高い住居費用、高い税金、不平等の深刻化などを経験している。 米民主党は欧州式福祉制度の拡大を主張する。しかし欧州は成長の活力を失い、米国より経済的に遅れている。欧州連合(EU)の家計の可処分所得は米国の60%にすぎない。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートによると、2022年の欧州大企業の投資は米国企業の60%水準にとどまった。その結果、欧州大企業の成長率は米国の3分の2にすぎない。過去10年間、欧州は資本投資や研究・開発、生産性向上で米国を下回った。かつて好調だったドイツ経済も2018年以降は足踏みしている。 多くの米国有権者が欧州の長い休暇をうらやましく感じながらも経済的躍動性を望んだ。米大統領選挙の結果を決定づけた7つの激戦州の有権者は経済とインフレが最も大きなイシューだと明らかにした。彼らは経済の躍動性と成長を創出するうえで共和党の接近法を好んだ。 また、民主党は支配階級の政党と認識された。米国人の生活で最も重要な分裂は大卒かどうかだ。大卒以上は民主党に、高卒以下は共和党に投票する傾向がある。高卒者は大卒者より平均9年早く死亡し、肥満である可能性が高い。結婚する可能性がはるかに低く、離婚する可能性はさらに高い。高卒者の薬物過多服用死亡率は大卒者の6倍ほど高い。さらに悪いところは教育を受けた階層の人たちが不平等を拡大再生産する点だ。ハーバード大のラジ・チェティ教授によると、米国で所得上位1%に属する家庭の学生は、年間所得3万ドル未満の家庭の学生よりアイビーリーグに入学する確率が77倍も高かった。グローバルポピュリズムはこうした種類の不平等に対する反乱だ。教育を受けた階層が政治・経済・社会・文化で多くの権力を持つという認識のためだ。ハリス氏のような高等教育を受けた民主党員は抑圧される人々を助けるために政府の規模を増やすべきだと主張するが、多くの米国人が民主党の主張がエリートの権力を強めるための甘言だと考える。 韓国の状況は米国よりはるかに悪い。米国は高い成長率と低い失業率で世界の羨望の的になっている。半面、韓国は世界最高の出生率と類例のない高齢化で低成長の沼に入った。大企業と中小企業、大卒者と高卒者、正規職と非正規職の賃金格差は米国よりも深刻だ。内需不振の中、輸出で持ちこたえているが、保護貿易主義を前に出したトランプ氏の当選で厳しい4年間が予想される。政界は成長動力を回復させる案を模索するよりも、基礎年金拡大など福祉拡大に重点を置いている。労働・教育・年金など尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の3大改革は、尹大統領の支持率下落と共に座礁する危機にある。 韓国が危機を克服するには成長談論の再建が急がれる。米国の堅調な成長と欧州の長期不振を考慮すると、米国式の成長モデルが欧州式の福祉モデルより優れているといえる。米国のように解雇と雇用を簡素にする労働柔軟化と創造的破壊を阻む規制の緩和などでビジネスしやすい環境を形成する必要がある。トランプ氏の再登場は韓国に危機だ。しかし危機はどう活用するかによって機会にも変わる。 チョン・ジェホン/国際外交安保エディター