JMU、業績回復鮮明に。新プロジェクト・新組織で改革奏功
JFEホールディングス、IHI、今治造船が出資する造船大手、ジャパン・マリンユナイテッド(JMU)の業績回復が鮮明になってきた。24年4~9月期は経常利益、純利益とも79億円を計上し前年同期比では5~6倍の高い伸びに。今期は発足以来の最高益が濃厚だ。円安や商船の船価上昇といった事業環境の追い風だけでなく、灘信之社長のもとで進めてきた新戦略プロジェクト「JMUX(ジェイマックス)」が着実に実を結んでいる。 JMUXは「ビジネス」「ヒューマン」「デジタル」の3テーマで成る。これを組織で体現するのが、4月からスタートした新組織「技術研究所グリーン&スマート・ワークスラボ」「人財組織開発センター」「デジタル業務改革推進センター」だ。 JMUXビジネスでは技術ブランドを磨くべく技術研究所も改称。もともとJMUは溶接の自動化率が6割と高く、職人技とされてきた「ぎょう鉄作業」でもビッグデータ活用でロボット2台がこなす。こうしたスマートファクトリーやAI活用、研究開発を推進している。 将来に向けた設備投資も決めた。船台は4年先まで埋まり、その約6割は新燃料船。ただ新燃料船は低温に保つための配管など艤装時間が伸び、生産効率が従来船より1割ほど下がる。建造隻数を維持すべく、有明事業所では岸壁能力を増強。津事業所では800トンクレーンを増設し、呉事業所の新宮地区では7千立方メートル級にも対応した燃料タンクの内製に乗り出す。 JMUXヒューマンは社員が成長を実感する人財経営を進めるもので、人材組織開発センターには若手やエンジニア、現業系の人材が結集。CHOには女性を起用した。JMUは造船・海洋を志望する優秀な人材を獲得しやすいポジションにあり、現場目線でスキル習得のためのセミナーなどを行い育成を強化する。JMUXデジタルでは、デジタルスキル向上やスマートフォンを活用した業務のデジタル化で付加価値を高めている。 収益で明確に結果が出てきており、灘社長は「現場の頑張りのお陰」と労う。引き続きJMUXの実装に取り組みながら、JFEグループとして力を入れる洋上風力やカーボンニュートラルキャリア船などへ着実に対応していく。