核・ミサイル開発の裏で北朝鮮の“外貨獲得”戦略 サイバー犯罪に密輸も…
■世界に潜伏する“IT技術者” 外貨稼ぎの主力に
北朝鮮の制裁違反について調査する国連の専門家パネルは、23年10月に中間報告書を公表した。それによると、北朝鮮が22年の一年間にサイバー攻撃で盗み取った暗号資産は、推計17億ドル相当(約2500億円)と過去最高額にのぼったという。 北朝鮮は近年、外貨稼ぎの新たな主力部隊として、多数のIT技術者を国外に潜伏させている。 アメリカの財務省や国務省、FBI(連邦捜査局)は22年に共同声明を出し、「北朝鮮が高度な技術を持つ数千人のIT技術者を派遣している」と指摘した。IT技術者は、チーム全体で年間300万ドル(約4億2000万円)以上を稼ぐこともあるとしている。 また、IT技術者は、各国の企業でソフトウエア開発などの業務を担う。大半はリモートワークが可能なため、身分を韓国人や日本人などと偽り、報酬を得ているという。彼らはハッカーとの関連も指摘されており、雇用された企業のシステムをサイバー犯罪の入り口にしている疑いもある。 IT技術者の多くは、中国やロシアなど、北朝鮮と友好関係にある国に身を潜めている。拠点は頻繁にかわるため特定も難しく、“野放し”になっているのが実情だ。
■収入源確保に躍起…新たな動きも
国外で働く北朝鮮労働者の大半は、中国にいるとされる。ところが最近、北朝鮮はロシアへの労働者派遣を推進する動きを見せている。 23年12月、ロシア沿海地方の代表団が北朝鮮を訪れ、両国の経済協力について協議。韓国メディアは、ここで労働者派遣をめぐる議論が行われた可能性を報じた。北朝鮮の労働者派遣も、国連安保理制裁に違反している。 ロシアに派遣された者の多くは、「建設業などの肉体労働」(消息筋)に従事するという。ウクライナ侵攻に若者が動員される中、ロシア側にとっては、貴重な労働力だ。IT技術者に比べてコスパは悪いが、北朝鮮にとってはこれも貴重な収入源であり、今後も新規労働者を大量に派遣するとの観測がある。
■兵器開発の資金源を断てるか
さまざまなルートで外貨を稼ぐ北朝鮮。その資金源が遮断されない限り、これからも軍拡路線を突き進むだろう。 23年12月、安全保障を担当する日本とアメリカ、韓国の高官が北朝鮮対応をめぐり協議。核・ミサイル開発の資金源となる不正なサイバー活動などを阻止すべく、連携を強化することで一致した。ただ、どこまで実行力のある対策を打ち出せるかは未知数だ。 24年も北朝鮮の脅威を無視できない一年になる。それを支える外貨獲得戦略に歯止めをかけることができるのか、国際社会の対応力が問われている。